いわきの暮らしのコラム
1本のワインが地域とつながる
古川クラ酒店店主 丹 典彦さん

無農薬の有機栽培で作られたぶどうのみを使用した「自然派ワイン」。
酸化防止剤を極力使わず、ぶどう本来のおいしさが感じられると、昨今、愛飲者を増やしている。
その自然派ワインの取り扱いで、全国有数の品揃えを誇るお店が植田にある。
今年40歳になる店主、丹典彦さんは、いかなる思いで自然派ワインを取り扱っているのだろう。
丹さんに話を伺うと、ワインと「農」、そして「食卓」へと話は広がっていく。


丹さんが自然派ワインと出会ったのは、今から15年ほど前のこと。
店を継ごうと地元に戻り、販売先への営業や新規顧客の開拓に没頭している頃だった。

初めて自然派ワインを飲んで、その風味の奥深さ、複雑さに驚かされました。
その時はおいしいとは思わなかったんです。何だこれは! って衝撃でしたね。
人の舌に合わせて作ってない。むしろ本来の葡萄の味なんだとわかりましたし、
決してウソをつかない人が作っているんだなと実感できました。
ちょうど自分の仕事にも『なんか違う』って感じていたこともあって、
一気に自然派ワインに魅かれていったんです。

その後、心に火が灯るように自然派ワインを学び始めた丹さん。
インポーターや生産者ともつながりが生まれ、少しずつ取り扱うワインが増えていった。
今では常時3000種類もの自然派ワインを取り揃えるまでになり、
全国の飲食店や愛飲家から注文が相次いでいる。

当然のことだけど、ぶどうの農家によって味が違うし、その年によっても違ってきます。
天候不順や不作のリスクを負って彼らはワインを作ってる。
だからぼくも手抜きできません。
自然派ワインって、土の風味とか茎の風味とかが微妙に感じられるのがいいんです。
個性があるから、生産者や醸造家の顔が思い浮かぶんですよね。
そういうワインだからこそ、ぼくらはしっかりと伝えて売らなくちゃいけない。
酒屋だけじゃないですよ。
うちからワインを買って頂いている飲食店のシェフたちも同じ思いだと思います。
そして、そういうシェフたちの期待に応えるように、地元の農家さんも気合が入る。
1本のワインから、食に関わるみんなが本気になっていくんです。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

ところ狭しと貯蔵されたワイン。丹さんがお気に入りの1本を探してくれる。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

丹さんは、1本1本のワインに込められた思いや物語を伝えていく。

 

自然派ワインを取り扱い始めてから、地元のシェフたちとの関わりも生まれ、
古川クラ酒店でワインを仕入れる飲食店は、確実に増えてきているそうだ。
実は、いわき市は、県内でも有数の「自然派ワインを楽しめる地域」なのかもしれない。

お互いが刺激しあえる環境を作っていきたいと、ぼくは思ってるんです。
これをやれば大変なのはわかってるけど手抜きしない。
これを足せば量を増やせるのはわかってるけど足さない。
そういう真剣な思いで作られている自然派ワインを取り扱うからこそ、
飲食店や酒屋が一緒になって地域の食文化を底上げしたいという気持ちは強いです。
ちょっと生意気に聞こえるかもしれませんけどね。

自然派ワインを通して「農」に思いを馳せることが増えたという丹さん。
それは、ぶどう農家に対して、だけではなく、地元「いわきの農」にも広がっている。

いわき市はすごいポテンシャルを秘めていると思いますよ。
でも、農家、酒屋、飲食店の横のつながり、切磋琢磨という意味では、
まだまだ頑張らなければいけないと思っています。
なぜ頑張らなくちゃいけないかって、食卓につながっているからです。
例えば、子どもたちに「トマトはどこにあるの?」と聞くと、
「スーパーにあるよ!」なんて答えが返ってきてしまう家庭もあると思います。

次の時代の子どもたちにも、地元の食文化をしっかりと伝えていく責任がある。
自分たちがつなげ役になって、地域と農業を近づけていきたいと思っています。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

丹さんのオススメは、クロード・クルトワ氏の醸造元「デ・カイユ・デュ・パラディ」のワイン。本国フランスでは「奇跡のワイン」とも呼ばれ、熱狂的な信奉者も多い。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

机の上に何気なく並べられたワインにも、作り手の思いと物語がある。それを知るのも自然派ワインの楽しみ。

 

ワインそのものだけでなく、地域の農業への真摯な態度が共感を呼び、
丹さんの店には有名レストランなどからも注文が入るようになったが、
丹さんには、それらを驕るような言葉や態度は一切感じられない。
むしろ、その真摯さ、厳しさ、自然への敬意は、さらに研ぎすまされてきているようにも感じる。

食って命に関わることですし、やっぱり本気で取り組まなくちゃいけません。
でもね、最後はやっぱり楽しい時間を過ごすために食べるんだと思うんです。
「食」を漢字で書くと「人(屋根)」のなかの「良いこと」って書くじゃないですか。
家族や友人と、いい時間を過ごすためのものだと思うんです。
だからこそ、皆さんには家で食べること
を大事にしてもらいたいし、
そこで、地域の食に関わるいろいろな話をして欲しい。
いわきは気候もいいし、身近なところに「農」がある。
だから、食材のこと、畑や田んぼのこと、地域のこと、いわきのこと。
食卓を囲んでたくさん話をしてもらいたい。
その食卓の真ん中に、ワインがあれば最高ですね。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

ワインだけでなく日本酒にも造詣の深い丹さん。何でも気兼ねなく相談に乗ってくれる。

取材・文/小松理虔

 

○店舗情報○

古川クラ酒店
住所:〒974-8261 福島県いわき市植田町中央1丁目1-15
電話:0246-63-3362
営業時間:10時〜21時(日曜日定休)

Vin naturel 双兎 souto(自然派ワインのオンラインショップ)
http://souto.shop-pro.jp/

Google requires an API key to embed Google Maps. Enter your key in your Shortcodes option page under the "Maps" tab.