マイホームづくりを始める住まい手さんは、大半が30代。情熱、希望を持って、家づくりを始めます。

ネット等から情報を得やすい時代のおかげで、ファッションや食事等とともに、「インスタ映え」するようなおしゃれで、かっこいい住まいの要望が増えています。デザインする身としては、うれしい流行です。しかし、センスのいいおしゃれな家をつくったはずなのに、住んでみて、こんなはずではなかった。という、残念な話も聞こえてきます。

失敗した背景には、視覚的要素を優先するあまり、家づくりに必要な全体のバランスが崩れているようです。

そこで、今回は失敗や残念を回避するためにおしゃれな家づくりのための「3つの裏ワザ」を紹介していきます。画像ではわからない、住む前には想像しにくい部分をセンスアップする技ですよ。


家を建てるということは、数千万円規模のオーダーメイドを発注することになります。人生最大の投資!ということも多く気合が入ります。夢も広がります。かっこいいおしゃれな家をつくりたい、人と同じではイヤ、今まで住んだことがなく写真で見たような家に住んでみたい!と期待が高まります。
特におしゃれな家のリクエストで多く感じられるのは、吹き抜け、広々としたリビングダイニング、趣味室、自然素材利用、木製窓、間仕切りないワンルーム、造り付け家具、こだわり設備機器、友だちを呼んでBBQできるデッキなどが挙げられます。これらのビジュアル的、素材的、モノ的な部分を考える際のノウハウを「表ワザ」としてみます。
「表ワザ」は、ネットや書籍、ショールーム等で調べやすい情報ともいえます。これらの表ワザは、自分の好みやこだわりを表現しやすい要素です。好みをまとめる方法は、第4、5話コラム「好き嫌い」と家づくりもご覧下さい。
しかし、住まいづくりには、「表ワザ」と共に、機能的、性能的、持続的な面を考慮したつくり込みも必要です。これらの部分を「裏ワザ」として、特に考慮が必要と考えられる、「吹抜け」、「外部木」、「予算」の3点を紹介します。

 

裏ワザその1「吹き抜けは断熱とセットで」

住まいづくりの最も多いリクエストかつ失敗要素の「吹き抜け」
開放感あるリビングと吹き抜け。1階と2階がつながる吹き抜け空間。憧れる方多いですよね。しかし、住んでみて、「冬寒い!」という残念な話も多々あります。
吹き抜けをつくる場合は、一緒に考えておかなければならないことがあります。

①冬寒い!とならないような、高断熱仕様とすること。
壁、床、天井、窓の断熱性能を高くしないと室内の熱は、変化しやすくなります。断熱性能が低いと、冬は暖かい空気が上にたまり、1階は寒くなります。生活する室内を覆う断熱層が必要になります。

②吹き抜け空間とその他の部屋を建具などで仕切れること。
仕切りがないと、温めたり冷やす部屋のボリュームが増えて、時として効率が悪くなります。また、音が響きやすいという問題もあります。①と②については、コラム第7〜9話断熱もデザインで詳しく書いてありますのでご覧ください。

③吹き抜け空間もコストがかかること。
吹き抜け空間には何もないから、建設コストがかからないと錯覚されることがあります。しかし、その空間をつくるために、足場が必要だったり、空間を成り立たせる建材、下地等も必要になります。吹き抜けも一部屋分工事費がかかるとざっくりとお考えください。


▶「吹き抜け」をつくる際の裏ワザは、断熱性能を高めることと、吹き抜けコストがかかること
この2点を最低覚えておいてください。吹き抜けは、広い空間のゆったり感が得られるとともに、計画の仕方によっては、エアコン1台で全室を冷暖房できるという魅力もあります。


裏ワザその2「外部の木は水嫌い」


外壁が板張りの住まいに憧れます。外から見たとき、木を使っている感じが増します。優しい雰囲気もいいですね。
住んで数年経ち、木部が風雨にさらされると、徐々にネズミ色に変色していきます。庇がなく納まりが悪いと、木部が腐りやすく、建てて数年で外壁塗装や修繕工事費が発生することがあります。その時に問題になるのが、外壁木部のメンテナンス費用を見込んでいなかったということです。同じような場所に木製建具を利用している場合も同様なことがいえます。

外部に板を貼りたい場合には、必要なことがあります。

①古い民家から学ぶ。深い庇と水が切れるおさまりで使う。
外壁に雨がかかりにくく、水が流れ残りにくいおさまりのつくりとする必要があります。水がかかりやすく溜まりやすいと、木が腐りやすいためです。写真(上)は築250年古民家リフォームの外壁工事、昔からの方法の「下見板貼り」です。外壁通気層を確保し、下見板貼りに適した板の厚みと貼り方があり、水の切れが良い方法になります。

②外壁塗装代をケチらない。将来的に再塗装する予算を確保すること。
外壁に塗装をすることで、木が長もちし、外壁の状態を維持しやすくなります。また、水が切れる納まりで、木の色が変色してよければ、塗装をしない方法もあります。できれば、10年おきに塗装を行えると理想的です。

③おさまりを考慮した上で、焼く方法などもあります。
外壁塗装の他に、昔から板を焼く方法もあります。表面を炭化させることで腐朽しにくくさせることができます。

④耐候性の優れた樹種を使う
ウリンやバツ、イペといった南米や東南アジア産の樹種は海沿いの建物のデッキや船舶などにもよく使われており、厳しい自然環境に耐えうる耐候性があります。塗装も必要ありませんが高価です。こちらはメンテナンスの手間と予算との兼ね合いで検討されるとよいでしょう。北米産のウェスタンレッドシダーは比較的安価です。

 

▶日本の民家や長屋を見ると、板張りの外壁がたくさんあります。数十年、数百年近く昔のものもあります。長く持っている状態を真似するのが一番安心なんです。木を理にかなっていない使い方をする建物は、やがて木部が朽ちてなくなる、交換してしまうので、残らないからです。


裏ワザその3「初期投資より継続投資」

住まい造りの予算は、最初考えていたより、作りだすと高くなる場合があります。家づくりを進める中で、要望が広がっていくためです。せっかくつくるなら、あれもこれもという心理が働きます。しかし、心配なのは予算が高くなり、ローンの審査が通らない、もしくは返済がきつくなることです。もう一点は、最初に作り込みすぎると、家族構成の変化に対応しにくい住まいになる可能性があります。10年後、20年後と将来的な変化を考慮した予算とプランの計画が必要になります。
長ーい目で見て考えるためには、継続投資もおススメです。

①基本性能に初期投資。
基礎、木構造躯体、断熱材、高断熱サッシ、省エネ設備。この5点は、長期優良住宅や省エネ基準等に準じるレベル以上のものを選ぶことが、長期的にみても大切です。冬暖かく夏涼しく、光熱費もお得になります。また、設備以外は、最初につくり込まないと将来的に手を入れにくい部分になります。基本性能となる省エネ性能については、コラム第1~3話2020年省エネ義務化もご参考にご覧ください。

②ライフスタイルの変化を想像しながらの間取りづくり。
間取りを考えるときには、子どもさんが個室がほしくなること、巣立った後の活用しやすさ、介護同居の可能性などを想定することも必要です。たくさん個室で仕切るだけでなく、家具で仕切ったり、建具で仕切ったり、部屋の隣接の仕方などで変化に対応しやすい間取りができます。その分、将来的なリフォーム費用を抑えられることにもつながります。コラム第6話住まいの寸法感覚の中の、35坪モデルなども参考にご覧ください。

③インテリアは、家具やDIYなどで継続投資。
おしゃれな部屋の写真をみていると、家具や小物、照明器具等で雰囲気がつくられていることにも気づきます。住まい自体はシンプルにつくっておいて、家具の選び方、DIYで棚などをつくることも考えられます。初期投資を抑え、徐々に雰囲気ある部屋を作り込むという継続投資的な考え方もあります。

▶新しい家に住んでみると、四季の変化、住まいのいいところ改善したいところが見えてきます。土地と住まいの状況を理解してから手を入れられると、より理想的な住まいに近づきます。徐々に作り込む方法もあります。


ファッションに関しては「おしゃれは我慢」、などという言い方もあるかもしれません。しかし、毎日、何十年と生活する住まいで、見た目を重視して、暑さや寒さを我慢すること。ローン負担で毎日の家計がしんどいということになるのは、残念です。

デザイン的なあこがれや要望はあると思いますが、住まいの基本的な部分は、できるだけシンプルなつくりとし、基本性能確保し、メンテナンスが容易な建物とすることが一番お勧めだと考えています。それでも好みやこだわりを反映できる部分や方法はたくさんあります。

住まいとは、風雨に耐えて、劣化修繕の手間が少なく、冬暖かく夏涼しいことが大前提。住み心地が良いからこそ愛着がわき、長い年月を経て、ご家族のライフスタイルやセンスがにじみ出る。そのような家づくりが理想的ではないかと思います。ぜひ、「表ワザ」と共に「裏ワザ」も意識しながら、おしゃれな家づくりを楽しんでください!

環デザイン舎 北瀬幹哉