vol.5 我が家の断熱失敗談

はじめて家づくりをして、家ができて、住み始めて「あああ、ここをもっとこうしておけばよかった!」と思うこと、皆さんもあると思います。わたしの場合、ずばり「断熱」です。「東北の湘南」とはいっても、1月や2月ともなれば、やはり寒いもの。そして、寒くなってみないとわからないのが、家の暖かさです。

我が家も、断熱していないわけではなく、次世代省エネ区分Ⅳ地区(いわき市や関東地方など)の断熱性能にはして頂いています。だから家をつくっているときは「大丈夫だっぺ!」と思っていました。ただ、やはりいわきも東北ですので、真冬ともなれば当然寒いわけです。夏は暑くないか、冬は寒くないか、その時期になって実際に家で暮らしてみないとわからないものなんですよね。

なぜ我が家が寒いかと言うと、家の構造でわがままを言ったから、でした。

当初業者さんから来た案では、断熱のことを考え1階と2階をしっかり仕切った設計になっていたのですが、開放感が欲しくなり、玄関部分が2階のリビング天井までぜんぶ吹き抜けのデザインに変更してもらったんです。玄関から遮るものがないので床も空気も冷たくなります。おまけに、大きな窓をガンガンつけたため、空気があったまるのに時間がかかってしまうんですね。

さらに1階。運悪く1階で特に日当りの悪いところに寝室を作ってしまったので、寝室が寒いという事態に陥りました。「どうせ寝るだけだから」と、一番条件の悪いところを寝室にしてしまったんです。これがよくなかった。冬になると、自分の頭の位置の上にある窓から、顔に冷気が滑り落ちてくるのがわかります。

ですので、冬は寝室ではオイルヒーターを付けっぱなしにして寝ていますし(エアコンだと空気が乾くので)、2階リビングも朝晩はエアコン&石油ストーブです。我が家はオール電化なので電気代も高くなり、冬の一番の時期だとだいたい25,000円くらいにはなります。それでも、窓からは日差しがだいぶ入ってくるので、冬でも日中はエアコンは要りません。

 

—断熱性能とデザイン性の共存

通常、冬も暖かい家というのは、熱を逃がさないために断熱性能を高くします。断熱材性能を高める方法は、断熱材の厚みを厚くする、断熱性能の高い断熱材を採用する、窓の断熱性能が高い商品を選ぶ、断熱ブラインドや断熱内窓・内戸などを設置する方法等があります。同時に、隙間から空気が逃げないように気密工事もしっかり行うことが熱を逃がさないためには必要です。そうすることで、北東北、あるいは北海道クラスの基準を満たした住宅になります。冬でも寒くない家になる。

もう一方で、断熱するエリア、断熱区画の広さや大きさと設備の問題があります。同じ断熱材で同じ出力の暖房を設置した場合、広い部屋と狭い部屋では、暖まりやすさや暖房費は狭い部屋の方が有利です。断熱性能と空間の容量、設備能力などは相関的な関係があります。

しかし、我が家の場合は予算が限られ、住宅を「ローコスト」で抑えなければならないため、デザインを重視する代わりに断熱性能を犠牲にしました。本当は、我が家のような間取りでも、冬だけ締める断熱扉を設置することや断熱材の性能を高めること、サッシを高性能にすること等へお金をかければ暖かい家にはなったのでしょう。でも予算が厳しかったわけですね。

つまり、我が家のように予算が限られる場合は、「開放的なデザイン」と「断熱性能」のバランスを考えながらプランニングを決定しなければなりませんでした。

そのうえで、今この家に住み始めて改めて思うのは、「家の性能にもう少しお金をかけてもよかった」ということでした。やはり暮らしは「毎日」続けるものですし、暖かい家のほうが暮らしが身軽になりますし、とにかく心地よいんですね。冬でも暖かい家は確実にQOLがあがります。冷暖房費も最低限に抑えられます。

もちろん、そこは説明を受けていましたし、納得して家づくりをしたので後悔しているわけではありませんが、断熱性能を上げるためにお金をかけても、ローンにして月々の支払いにしたら微々たるもの。だったら、もう少し予算をかけておけばよかなったなと、極寒の日などはよく考えてしまいます。

—断熱性能、どこで見る?

家の断熱性能は、「屋根や天井」、「壁」、「床や基礎」、「窓などの開口部」、「換気」などの仕様を見ることで、計算によって出すことができます。出てくる数値が熱損失係数(Q値)です。Q値は、屋外と家の中に1℃の温度差があった時、1㎡の床面積あたりに逃げる熱の量を出したもので、数値が小さいほど断熱性能が高い家ということになります。(※最近はQ値ではなくμ値を利用し、設備のエネルギー効率も含めた一次エネルギー消費量で評価するようになってきています。)

断熱性能を上げると、家の外に暖気が逃げにくくなるので、家の中の熱が家全体を暖めてくれることになります。そうすると、天井と床の温度差も小さくなり、家の中の温度差も小さくなるので、とても快適な空間が得られるようになります。

業者さんによっては、断熱の得意な業者さんもいますし、ごくごく普通の断熱材を常用する業者さんもいます。もちろん、コストによってかけられる費用も変わってきますが、地球環境に負荷をかけずに済むならそちらのほうがいいと思います。

家づくりを始める前に、ぜひ「高気密高断熱」の家を、1度でいいので見学してみるといいかもしれません。余裕を見て、冬の時期に行っておくのがいいと思います。わたしはこれをせずに春先から業者さん探しをしてしまったので、断熱住宅のよさに気づくことができなかったんです。

家づくりを始める前に、高気密高断熱住宅を実際に肌で感じてみてください。そのうえで業者さんと話してみる。すると「より後悔のない家づくり」になると思います。

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