第8話 断熱もデザイン②「熱を包む断熱ライン」

2寒い冬、セーターやフリース、防寒着などを着る機会が増えます。作業のしやすさから、そで部分がないダウンジャケットを着る機会も増えます。その場合、当たり前なのですが、ダウンジャケットを着ている身体部分と着ていない腕の部分の暖かさは異なります。

住宅も同じで、住まいの中で断熱をしたい部屋をぐるりと包む範囲を断熱する必要があります。室内と外気との境界が断熱ラインです。断熱ラインは、基本的に外壁、天井、床が途切れることなく、隙間なく、連続する必要があります。今回は連続させる断熱ラインについて紹介していきます。

 

1.断熱ラインは窓が重要

断熱ラインの中には、眺望や採光、通風を得るための窓があります。壁に入れる断熱材の性能と窓の断熱性能の差をご存知ですか?窓は断熱材に比べ熱が逃げやすい部分なので、ご注意ください。

コラム第3話「いわき家ナビ工務店の力」で紹介した、家ナビ工務店が利用している割合が高く、省エネ基準を満たす断熱材と断熱窓で比較して確認してみましょう。

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断熱材 断熱窓 参考:古い窓 備考
名称 旭ファイバーグラス/アクリアネクスト
厚み105㎜
密度14㎏/㎥
YKK
APW330
Low-E複層ガラス
単板ガラス
アルミサッシ
熱抵抗値

㎡・K/W

2.8 0.59 0.15 数値が大きい方が性能が高い
熱貫流率W/(㎡・K) 0.35 1.67 6.51 数値が小さい方が性能が高い

(単板ガラスアルミ窓の数値:自立循環型住宅への設計ガイドラインより)

「熱還流率=1/熱抵抗値」という関係があります。この式により、断熱材と断熱窓の熱性能値を比較してみました。断熱窓は断熱材の約5分の1(20%)の性能ということになります。それほど低いのか!と思われるかもしれませんが、古い住宅で一般的な、単板ガラスアルミ窓は、もっと断熱性能が低く、断熱材の約20分の1(5%)の性能、複層ガラス窓と比較すると、約4分の1(25%)の性能となります。窓からは熱が逃げやすい、だから窓断熱性能UPが重要になります。

2.断熱窓を選ぶコツ

窓の断熱性能や選び方の考え方を紹介します。まずは、窓の断熱性能と種類について。

・アルミ窓よりも樹脂や木製窓の方が断熱性能が高い。

・ガラスの断熱性能はものにもよりますが、一枚ガラス<複層ガラス<最近一般的になってきているLow-E複層ガラス。という順番で断熱性能が高くなります。

・窓の熱貫流率W/(㎡・K)の値が小さいものほど性能が高い。

・断熱性能高い方がもちろん価格も高い。

当たり前的ですが、性能よいものの方が価格も高い断熱窓。性能よい窓をより効率的に取り入れるコツもあります。メリハリをつけることです。窓より断熱材が入っている壁の方が断熱性能高く、コストも比較すると安いので、南面以外の窓は小さく、少なくする方法もあります。また、眺望が良い場所やインテリア的に木質感を高めたい場合は、木製窓とし大開口部をつくる、それ以外の部屋の窓はコストを抑えたものを利用する方法もあります。

以前のコラムで紹介した、家ナビ工務店がよく利用している断熱窓は以下になります。

No. メーカー名 品名 ガラス種類 熱貫流率
W/(㎡・K)
1 LIXIL エルスターS Low-E 1.3
2 YKK AP APW330 Low-E 1.67
3 三協アルミ スマージュ Low-E 1.90
4 YKK AP APW310 Low-E 2.14
5 三協アルミ マディオJ Low-E 2.33

この中でもNo2.のYKK AP APW330を利用している工務店がアンケートでは多数ありました。おそらく、同等の性能でコストが安いという点があるかもしれません。ちなみに表に示したどの断熱窓でも、性能をクリアーする断熱材とともに使っていれば、国の定める省エネ基準はクリアーする性能があります。

また、各工務店により取引の関係や使い慣れているということで、LIXILやYKK、三協アルミの中で、特定のメーカーがあります。メーカーや商品の違いによるデザインの好みもあると思いますが、熱貫流率値を見て判断するというのも一つの基準です。

熱貫流率値だけでは、実感が湧きにくいと思います。数値が小さい方が、冬の寒い時に窓際にいる時、ひんやりする感じが低くなるとイメージしていただけたらと思います。

3.断熱材を選ぶコツ

No. メーカー名 品名 厚み㎜ 密度㎏/㎥ 熱伝導率
W/(m・K)
熱抵抗値㎡・K/W
1 日本アクア アクアフォーム 105 12.8 0.034 3.1
2 旭ファイバーグラス アクリアネクスト 105 14 0.038 2.8
3 パラマウント硝子工業 太陽SUN 105 16 0.038 2.8
4 パラマウント硝子工業 eキューズ(EQL) 100 10 0.045 2.2

家ナビ工務店が利用している(コラム第3話)断熱材の中から性能が高いものの4種類です。断熱材の性能は、熱伝導率値が小さく、熱抵抗値が大きいものほど性能が高くなります。家ナビ工務店アンケートからは、No.2の旭日ファイバーグラスのアクリアネクストを利用しているところが最も多かったです。建材ルート的にも入手しやすく主流になってきている傾向があります。

断熱材を選ぶコツは、断熱材を設置する、床、壁、天井の厚みを可能な限り厚くし、かつ熱抵抗値が大きいものを選ぶことです。断熱材の素材自体は、「熱的」にはどれでもよいと考えてください。素材やメーカーはコストで決まる部分が大きくあります。個人的な感覚では、パラマウント硝子工業の太陽SUNはコストが安いのが魅力です。アクリアネクストは、熱性能良いものが充実してきて、入手しやすく使いやすい感じがします。天井断熱については、吹き込み断熱材が隙間なく断熱しやすくかつ、コスト・施工的にも魅力です。

断熱材の素材はどれがよいかという質問を受けることがあります。コストが許す範囲であれば、お好みでかまいません。自然素材系断熱材は、購入コストがグラスウール系よりは高くなりますが、施工や廃棄等の面では優れています。ウレタン吹き付け断熱材だけは、個人的にはおすすめしません。構造躯体などが吹き付け断熱材で覆われてしまい、将来的に室内側から建物の劣化等確認などが行いにくくなるためです。

住宅の一般的な柱サイズは105㎜角のものが多いですが、可能であれば120㎜角の柱を外壁部だけでも使うことで、断熱材の厚みも120㎜のものを選ぶことができます。そうすると、室内外に+アルファーの断熱材設置しなくても性能高めることができます。もちろん、断熱予算がかけられるのであれば、柱の外や室内側に付加断熱としてより断熱の厚みを増やすことがお勧めです。断熱材は「厚み」と「熱抵抗値」が選ぶコツです。

4.窓の断熱性能を付加的に高めるブラインド・内窓・内戸

壁床天井断熱材の性能を高めるには、厚みを厚くする付加断熱という方法があります。窓にも内側に付加する方法があるのでご紹介します。以下の方法は、新築でもできるのですが、住みだしてから、リフォームでも取り組める、窓の断熱性能をより高めるコツです。

①断熱ブラインド ⇒ 新築・リフォームにおすすめ
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じゃばら、ハニカム形状のブラインドがあります。障子のような風合いあるブラインドです。ブラインドの脇にレールも設置することで窓からの冷気などが室内へ入ることを防ぐことができます。断熱性能の高い窓の室内側へ設置するとより効果的です。カーテンかブラインドかどちらを設置しようか悩まれている場合は、ご検討してみてください。メーカーは、TOSOやSEIKIなどがあります。

②内窓 ⇒ リフォームおすすめ
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リフォームする際に、外壁やサッシを取り換えない場合には、内窓がお勧めです。室内側に枠を設置しペアガラス入りの内窓を入れるだけで室内の熱が逃げにくくなります。工事も早く、既存の窓枠へ、樹脂製の枠を設置し窓を入れるだけで出来上がります。写真は、マンションリフォームの際に内窓を設置している様子です。

しかし、基本的な建物が古いため隙間が多く、断熱材が入っていない建物では、壁から熱が逃げてしまい、内窓の効果が得られない場合があります。インテリアリフォームするときに断熱材を断熱ラインに充てんすることと共に内窓設置がお勧めです。

③内戸 ⇒ リフォーム・新築おすすめ

内戸、見慣れない言葉かもしれません。夜、カーテンやブラインドを締めるように、サッシの室内側に扉をつくることです。雨戸の室内側バージョンや障子のようなものです。障子の両面に障子紙を張ることで、障子紙の間の空気が断熱効果を生み出す方法や、引き戸の中に断熱材を入れたものを作ることで、開口部の断熱性能を高めます。内窓のガラスがないバージョンです。

断熱内戸と断熱障子、断熱ブラインドを断熱リフォーム後に、自ら工務店へ指示し設置したお施主さんによる断熱効果測定をご紹介します。私が、築30年代の中古住宅エコリフォームデザインをさせていただいた、歩花(ほのか)ハウスです。エコリフォームや工事のプロセスは、私のHPやブログでご覧いただけます。

【効果測定】
※1 断熱ブラインドの効果
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こちらは、断熱ブラインドのハニカムサーモスクリーンです。断熱サッシを利用していますが、冬は、体感的にも断熱スクリーンがあると無いではひんやり感が異なります。数値的には6度ほど温度差があります。


※2 断熱障子の効果
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障子に障子紙は通常室外側に貼りますが、室内側にも両面貼る方法を太鼓貼りと言います。障子紙は、断熱性能のある「サーモバリア」を利用しています。温度差は4~5度ほどあります。


※3 断熱内戸の効果
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断熱内戸は、シナ合板のフラッシュ建具の芯の部分に発泡断熱材を入れています。光も遮ることができるので、寝室などの利用も考えられます。温度差は、6~7度ほどあります。

★窓と室内の間に1枚断熱内戸などを入れるだけで表面温度が異なることが、サーモグラフィーの映像から確認できました。体感的にも冬季の窓近くで感じるひんやり感が軽減され快適感アップです。

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以上、断熱ラインを考えるコツをご紹介しました。基本は、壁床天井と窓になります。断熱ラインは、なかなか気にしない部分かもしれませんが、工事予算や住まい方、立地条件などから、取捨選択するきっかけになり、断熱ラインが強化され、住み心地アップにつながることを期待しています。次回は、住まいのプランニングと断熱などのコツを紹介します。

環デザイン舎 北瀬幹哉

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