家とともに人生(ライフ)もよりよく

ー家ナビ編集部の会社訪問その6ー

ライフデザイン株式会社 代表 佐河博明さん

ディテールまで行き届いた質の高いデザインと、計算された無駄のないプランニング、そしてそれらに基づいたモダンでスタイリッシュなイメージ。一見すると、その「デザイン」が高く評価されているようにも思えるライフデザインの家。そのデザイン力の原点を辿るため、佐河博明社長に話を伺うと、意外にも「デザインはシンプルに考えています」との答え。ではライフデザイン「らしさ」は一体どこにあるのか。佐河社長に、その哲学を伺いました。

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「デザインよりトータルバランス重視です」

―これまでいわき家ナビでも何度も取り上げさせて頂きましたが、ライフデザインさんの家は本当にモダンでスタイリッシュです。デザインに関しては、やはり佐河さんも自信を持っているのではないですか?

ありがとうございます。そういってデザインを評価して頂けるのはうれしいですね。確かに、私たちに家づくりを頼みたいと言って下さるお客様も、デザインに注目して下さる方もいます。でも、正直デザインに特に重きをおいているわけではありません。むしろ、ほかのハウスメーカーや地元の工務店と大きな差はないと思っています。今は業界全体のデザイン力が上がってきていますし。

個人のお施主さまが、設計事務所や建築家に設計をお願いすることも当たり前になってきました。こだわろうと思えばいくらでもこだわれる時代ですよね。でも、そのような時代に、地元にの工務店がやるべきことは、あえて一言で言えば「バランス」ではないかと思っています。プラン、施工、設備、性能、耐久性、デザインなどをバランスよく、そして、これが最も重要なのですが、現実的な予算のなかで形にする。そのためにはバランスが大事です。

特に、東日本大震災のあったいわき市では土地の価格も上がっています。住宅にかけられる予算がますます限られていますよね。そんな時でも、金銭的に大きな負担を抱えることなく、現実的な予算で提案しなければなりません。それは低コストの家をつくるということではなくて、お客様の状況に合わせ、実現可能で、よりベターな提案をしていくことが、私たちに求められているということです。私たちライフデザインはプランニングから施工、管理まで一貫して行っていますのでその中で様々な選択肢を見つけていくことが出来ます。バランス配分しやすいのが強みではないかと思っています。

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いつもダンディな佇まいの佐河社長

 

「建築に関わるようになった半生」

—確かに、ここ数年土地の価格の高騰は顕著ですね。それでも、これから家を建てたいという方に寄り添うという気持ちがあるのは、やはり「地元」だからということですか?

はい。わたしは、父が創業した工務店の家に生まれました。実は祖父も住宅建築に関わる仕事をしていたと聞いています。これまでずっと地元の人たちに支えられてきた会社ですから、地元の皆さんに喜ばれるような家を作りたいと思いますし、お客様のご予算の中で、出来るだけ実現可能な家を提供していくことが、私たちの責任だと思っています。

わたしが小さい頃は、よく家のとなりの作業場で遊んでいました。柱がたくさん積まれたところを飛び跳ねたり。昔は今のようにプレカット材なんてありませんでしたから、墨付けして寸法を決めたりしていましたが、職人たちの仕事ぶりを子供心にすごいなあと思って見ていましたね。父も、よく現場に連れて行ってくれました。いつの間にか、わたしも住宅建設に関わる仕事に就くんだろうとぼんやりと考えるようになっていましたね。

それで、建築学科に進学しました。当時は、実家が塗装屋さんとか内装屋さんとか、何かしら家業のあるところの生徒が多くいました。彼らとは今も付き合いがありますよ。今はみんな親の跡を次いで経営者になっています。青春時代に一緒に建築を学んだ仲間たちの存在も、地元に根ざした商売を意識させてくれる有り難い存在ですね。

卒業後は東京のゼネコン会社に勤め、いわきに戻り10年ほど建築設計の経験を積みました。その後、平成12年に市内で建築会社を立ち上げたんです。その頃は凝ったデザインで喜んでいただきたいとか、自分にしか提案できないものはなんだろうかとかいろいろ悩み続けていた時期でもありました。

さらに様々に経験と実績を重ね、ライフデザイン株式会社を立ち上げました。ようやく少しずつ自分のスタイルというものが出せるようになってきたと思っています。もちろん今も試行錯誤は続いていますし、もっといい空間ができるはずだ、もっと快適な家ができるはずだと考え続ける日々ですね。何というか終わりがないんです。でもそれが「家」なんだと思っています。

 

「お客様のご要望に100%応えないワケ」

—佐河社長は、さきほど自分が大事にしていることは「バランス」とおっしゃっていましたが、バランスのよい家をつくるために意識されていることは何ですか?

語弊があるかもしれませんが、お客様の要望を100%聞かないということかもしれません。これは決してお客さんの要望を無視するというわけではありません。最初に要望を100聞いてしまうのではなく、抑えた状態でファーストプランを出し、そのプランを元にして、そこに具体的に肉付けしていこうという考え方です。家づくりのプロとしての、お客様により相応しいと思われる提案をし、お互い検討してゆきます。

台所をこうしたい、リビングはこうしたい、皆さん様々な要望があります。でもその要望の多くは、住まいの「幹」の部分とは少し違う「枝葉」の部分が多いように思います。お客様の要望を聞こうとするがあまり、枝葉の部分ばかり取り入れ、無理矢理家に落とし込もうとすると、家づくりの本質が見失われてしまい、結果的に満足度の低い家になってしまうことがあります。

そうではなく、住まいの「幹」の部分を、お施主様のお話を伺いながら探し出し、将来の暮らしをイメージして、要望の50%くらいのところで、図面やイラスト、模型などを作り、それをたたき台にして具体的なプランにしていくようなプロセスを心がけています。実際の模型や図面でイメージすると、頭の中だけでイメージするより格段に想像力が膨らみます。だから結果的に満足度の高い家になるわけです。イメージ通りに進むわけですから。

90%まで要望を入れて図面を作って、それは予算の都合上できないとなったとき、またそれを50%くらいの状態に戻して再度考える、などということを繰り返していると、お施主様も疲れてしまいます。たたき台をスピーディーに作ることで、より明確なイメージが湧くようになり、さらには予算の管理もしやすくなるんです。
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女性スタッフの樫村さんが、よりイメージをつかみやすいようにと手書きでパースを描く。

 

「ヒアリングから資金計画まで担当」

—そうした家づくりを進める中で、社長ご自身は自分の役割をどのように意識していますか?

弊社は営業的な部署を設けていないんですね。ですので私がお客様への最初の相談対応から承っていますが、ヒヤリングからラフスケッチを出すところまでは特に集中しますね。そのラフスケッチの出来がその後の設計を決めますから、お客様からできるだけ多くの情報を得るためのコミュニケーションを心がけています。

私のラフスケッチをもとに、設計担当の永山が図面を作成し、お客様がイメージしやすいように女性スタッフの樫村が手描きのイラストにしたり、模型を作成したりします。それらを元にお施主様とさらに細かく打ち合わせをして、最終的に工務担当の大平が図面やイラストのイメージを現場に落とし込んでいく。こうして分業・連携しながらひとつの案件を進めていくのが私たちの特徴かもしれません。

それからわたしの仕事がもう1つありました。お金の話です。いくらでもお金をかけてよいのなら、家づくりは簡単ですよ。でもそんなことはあり得ない。予算という限られた条件の中でベストな提案をするのがわたしたちの仕事です。お客様は初めての家づくりであることが多いですから、お金のことでもわからないことだらけだと思います。お金の話をつめていくこともわたしの仕事ですね。

 

「常に頭のなかにある『よりよい家』への思い」

—ここまで佐河さんのお話を伺って、とてもバランス感覚を重視していることが理解できました。最後の質問ですが、佐河社長にとって「いい家」とはどんな家でしょうか。そしてそんな家を、今後はどのように提供していくのか。今後の抱負を聞かせて下さい。

家というのは一生のうちで何回もつくるものではなく、ほとんどの方が1回か2回でしょう。ですので住んでから「こうすればよかった」と気がつくことも多いんです。人はやってみないと気づかないものですから、私は自分が日常生活を送るなかで得られる気づきを大切にしています。生活者目線を大事にするということですよね。自分の設計した家は本当に快適なのか、住みやすいのか、もっと工夫できるんじゃないか、わたしも、自分の自宅での暮らしのなかで検証し、考察していくことを心がけています。常に生活者の目とプロの目とを持って考えることでお客様へ提供する家の質も上がってゆくと思っています。「いい家」とはなにか、という答えにはなっていないかもしれませんが、日々「よりよい家」について考えを巡らせています。

予算や敷地など、家づくりには多様な条件があります。地域の風土、土地の状況、そしてお施主様の生活や人生のことまでを考えながら家づくりを提案したい。会社の名前を「ライフデザイン」としたのも、実はそういう思いがあってのことなんです。家というのは一生のうちで一番高い買物と言われますし、家づくりは自分の人生、家族の在り方を問い直す作業でもあります。家とともに人生(ライフ)もよりよくデザインするお手伝いができればいいですね。

今後は狭小な土地でも充分な住み心地が得られる都市型住宅だったり、中古住宅をリノベーションして住んでいくようなスタイルも提供していきたいと思っています。選択肢は家の数だけあります。ぜひお気軽にご相談ください。

 

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会社名:ライフデザイン株式会社
所在地:〒971-8123 いわき市小名浜相子島字石田64-3
代表取締役:佐河博明
TEL:0246-53-2617 / FAX:0246-53-2637
E-mail:iwaki@lda999.co.jp
主な事業内容:住宅の設計および施工
事務所・店舗・商業施設等の設計及び施工
その他、増改築・リフォーム・建物補修等


文・写真:小松理虔(ヘキレキ舎

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