2018年の夏は暑かった!それでも、お盆を過ぎると、涼しい日が増え、ほっと一息つけます。そんな季節には、窓を開けて、流れる風の涼を楽しめます。
いわき市内では、沿岸部や山間部地域では、他の地域と比べ涼しい風が吹きやすく、クーラーをほとんど使わないという家庭もあります。住まいづくりの要望の中には、クーラーがあまり好みではなく、できるだけ風通し良くして過ごしたいということもあります。
そこで、今回は、住まいづくりの際に気をつけたい、住まいの通風計画、風通る窓「風窓」づくりのコツをご紹介していきます。
1.夏涼しい住まいの基本条件
まず、住まいを涼しく快適にするための3つの基本条件をご紹介します。これから毎年猛暑が来るかもしれないことを考えると、住まいづくりの際には、涼しさの基本条件を抑えておいてほしいからです。
①高断熱
最も基本となるのは、住まいの高断熱化です。断熱性能を高めることで、日射遮蔽や通風の効果も高まります。また、エアコンの効きもよくなります。断熱は、暑さや寒さの原因となる熱の移動を「ゆっくり」させる効果があるからです。詳しくは、コラム第7~9話「断熱とデザイン」をご覧下さい。
②日よけ
夏の暑い日差しは、屋外でシャットアウト!熱を室内へ入れないことで夏の暑さを低減できます。昔から利用されている「すだれ」は理にかなっています。詳しくは、コラム第10~11話「夏も快適に!『日よけ』のデザイン」をご覧下さい。
③通風
住まいに風が通りやすいと、体感的にも心地よいし、室温がちょうどよければクーラーより体が楽ということがあります。通風は、中間期や夏の夜間に涼しさを得るのに有効です。通風を得やすいと、室内にこもった熱気や臭気などを排出し、カビにくくするという利点もあります。
今年の7月末頃、築250年古民家高断熱リノベーション設計した住まい(https://www.i-ienavi.com/archives/7830)に伺いました。日中30度を超え暑い時期です。それでも、お昼頃を除けば、窓にすだれをつけて、各部屋の窓をすべて開けて、扇風機で風の流れを促進すると、クーラーなしでひんやりと過ごせているということでした。住まい手さんは、高断熱の家に生活しだして1年目くらいですが、夏涼しく過ごす基本条件を見事に使いこなし、住みこなしされていました。
通風を得る方法は、基本的には窓を開け、家の中に風の流れ道をつくるだけです。そのため、窓をどこへつけて、どのような窓とし、開け閉めの方法が関係します。以下に、配置、種類、使い方の3点を紹介します。
2.風窓の配置
自然風は、その土地によります。風が流れやすい方角などがあります。また、住宅密集地では、通風を得にくいということがあります。そのため、自然風を積極的に利用するのであれば、どの土地を選ぶかというところからも住まいづくりは始まっています。今回は、近隣が建て込んでいなく、自然風、通風が得やすい環境という前提で進めます。
①入口と出口
通風を得やすいのは、住まいの平面に風の入口と出口をつくることです。経験的に分かる方が多いと思いますが、南側の居間の窓を開け、隣接する北側のダイニングキッチンなどの北側窓を開けると、南北に風が流れる感じです。個室に窓が1つよりは2つあるほうが、風は流れやすいということです。
(住まいの風の流れ平面イメージ)
②窓の大きさ
通風には、窓の大きさも影響します。窓が大きければ大きいほど、よく風が流れます。南面の窓は採光、眺望面からも可能な限り大きくし、北側の窓は小さくすることが多いと思います。しかし、大きい窓が取れない場合は、窓面積の合計で考えることも可能です。小さい窓が沢山あれば、大きな窓と同じ通風効果が得られます。
住まいの工事費では、建具の大きさが影響します。工事費を下げるために大きい窓を設けずに、小さい窓を多く選定する方法もありますが、風通しを考えると大きい窓もバランスよく欲しいところです。
③断面も考える
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窓の位置や大きさ、通風を得ることを考えるときに平面的に考えがちですが、断面的にも考えることを忘れないでください。住まいの高い所に窓をつくることで、内外の温度差などにより風が流れやすい効果があります。1階の窓から2階の窓へ風が流れるイメージです。2階建てであれば、階段室に窓を設けることも有効です。
3.風窓の種類
通風を得やすい窓を選ぶことも必要です。窓を開けやすいかどうかということがポイントです。外出時や夜間でも窓を開けて通風を得やすいかということになります。窓を開けやすくする要素を紹介します。
①外部格子
窓を開けたままにする際、安心なのが、窓の外に取り付ける格子。格子には、縦格子、横格子、シャッターなど様々なタイプがあります。窓からの眺めがあまり求められない、便所や洗面所、勝手口などに格子を設置する場合がよくあります。
(写真左が通風雨戸。右が外付けブラインド)
窓からの眺めがほしい窓には、雨戸や外部ブラインド型、シャッタータイプもあります。雨戸など自体でカギをかけられるので、大きな窓でも防犯面も安心な使い方ができます。
②小窓
窓を開けていても人が入れない、幅の狭い窓、小窓などを使うことは、防犯的な側面でも有効です。夜間に開ける用の窓として、小窓を部屋の高い位置につけるのもお勧めです。
③縦すべり窓
(YKK ウインドキャッチ連窓)
縦すべり出し窓は、窓を屋外側へ開き出すため、風向きにより流れる風を受け止め室内へ取り込みやすいという点があります。ウインドキャッチ連窓という、風の流れを取り込むことを意識した窓商品もあります。
④玄関・勝手口網戸
既存の玄関や勝手口に後付けでつけられる横引き網戸があります。ホームセンターやネットで購入できます。購入後、自分で取り付けることになりますが、既存の建具枠に取り付けられます。今ある開口部を活かす方法です。
(YKKapより)
⑤引戸
家全体の風の流れを考えると、
写真は、引戸の大きさを天井高さまでとすることで、扉を開いた時にも壁の一部に感じられるデザインとしています。開き戸の場合は、邪魔になりにくいドアストッパーをつけ、ドアを開いても邪魔になりにくいプランづくりを検討ください。
4.風窓の使い方
風窓の配置や種類などを紹介してきましたが、住んでから開閉しやすいことが一番大切です。住んでから窓が開けやすいかどうかを想像しながら、開けやすい位置に計画することがお勧めです。
(通りすがりに見つけた様々な種類の窓を開け通風を得ている住まい)
①2か所以上開ける
昔から同じ場所に住んでいる人は、季節ごとにどの方向へ風が流れるか熟知している人が少なくありません。新しい家に住んでみて、風の流れを理解してきたら、効果的に風の入口と出口、2か所以上の窓を同時に開けることが効果的な通風獲得策です。
窓の配置でも書きましたが、平面的だけでなく、断面的にも窓を開けることを意識してください。高い部分の窓は、開けっぱなしにしていても防犯的に安心な場合が多いので、効果的です。
②夜の涼しさ活かす
お盆を過ぎてくると夜は涼しい日が日ごとに多くなります。そんな季節には、夜積極的に窓を開けて過ごす意識を持っていただけると、クーラーいらずに過ごしやすくなります。
③外構計画
間接的な効果を期待するならば、窓の外の外構計画もあります。家の周りをすべてコンクリートなどの仕上げとせず、木を植えたり、緑のカーテンを育てたり、芝生とすることで、地面の熱の照り返しや日射遮蔽の効果が生まれ、室内に入る熱を下げる効果が期待できます。
・・・気まぐれな風とつきあいやすい住まいづくり・・・
涼を得るための通風得られる窓のことを書いてきましたが、風は、案外、気まぐれなもの。どの方向から、いつどれくらい吹くのか分かりにくいものです。風を頼りに運航する帆船ではありませんが、風の流れを感じ、住まいの窓やドアの開閉生活を楽しめる家づくりも考えてみてください。開閉しやすい建具を考え選ぶと、間取りを考えるのが楽しくなりますよ。
環デザイン舎 北瀬幹哉