あれは確か、春だった。ポートランドに行ってみたくなった。

アメリカ北西部・オレゴン州に位置するポートランドは、まちづくりの先進都市としてよく名前があがる場所である。「全米でもっとも住んでみたい街」「全米一環境に優しい街」。人口約63万人、人種の割合的にはヨーロッパ系が70%以上と多くを占める。地中海性気候に属しているため温暖な気候が特徴。年間を通じて曇りや雨の日が多い。

ここ数年、日本からも多くの人がポートランド視察に向かい、本屋にもポートランド本が溢れている。片田舎の街のどこがそんなに人々を魅了するのだろうか。ナイキの本社がある、緑が多い、旅人を魅了してやまないデザイナーズホテル「エースホテル」がある。このぐらいの情報と、友人から借りたポートランドガイドブックを片手に、ポートランドに向かった。


着いた日は、雨だった。ポートランドらしさに迎えられた。街と自然が一体となっている。自然の中に街がある、という表現があっているような気がした。森がモリモリ。
ポートランドは移動も楽しい。公共交通も充実している。空港からダウンタウン・近郊都市までつながるMAXライトレール、路面電車、路線バス、自転車のシェアリングサービス。公共交通の発達や交通手段の拡大により、車での移動や自家用車の利用が減り、CO2排出量の削減にもつながったという。街全体がコンパクトで徒歩でも十分見て回れる。調べてみると、ポートランドは1979年、都市部と農地や森林を区別する「都市成長境界線」を導入し、開発できる都市部と農村地域の役割をきっちり分けている。都市部を徹底的に開発し、徒歩20分圏内に生活に必要な学校、スーパー、職場、娯楽施設などを設けた。境界線を作ったことにより、コンパクトなまちづくりが実現し、地域にある資源もそのまま生かされ、バランスのいい街が出来た。なるほど、と思いながら防水パーカーのフードをかぶり、雨をしのぎながら街を歩いた。〈MAXライトレール〉
〈自転車のシェアリングサービスで移動する人〉

いくつか行きたい場所があった。


 

Ace Hotel Portland – エースホテル ポートランド

ポートランドのアイコン的な場所。1998年シアトルからはじまったACE HOTELは、90年程前に建てられた「クライドホテル」をリノベーションして独自のスタイルを確立したデザイナーズホテル。世界中の旅人やクリエイターから愛されているホテル。雑誌で何度も見たこのラウンジ。ニューヨーク・マンハッタンのエースホテルはラウンジにフリーランスの人たちが集まり作業をしている光景が常。それとは対照的で、日常の延長のような空間がそこにあった。ホテルには、ポートランド発でサードウェーブコーヒーブームの火付け役となった「Stumptown Coffee Roasters」が併設されていて、皆がコーヒー片手に時間を過ごす。

このエースホテルが2019年末に京都にやってくる。アジア初となる「エースホテル京都」。建築家の隈研吾氏が外観や内装のデザインを監修するということで、どうなるか楽しみだ。


 

Powell’s City of Books  – パウエルズ・シティ・オブ・ ブックス

ポートランド最大の独立系書店。新刊と古書が区別なく並んでいるのがおもしろい。両方を揃える書店としては世界一の規模だという。街のワンブロックを使った広さを誇る店内は3階建で、エリアごとに色分けされている。とにかく迷子になるレベルの広さ。こちらは元自動車ディーラーの建物を再利用したものだ。エースホテルと並んで、観光客が必ず足を運ぶ場所。

 
ランチは、街の中心にあつまるフードカーで。アジアから南米、アメリカンまで多国籍なお店が並ぶ。


 

The God Mod – グッドモッド

Powell’s Book Storeから歩くこと少し。派手な看板もないビルの4階にひっそり佇む家具屋「The Good Mod」へ。中に入ると別世界。広々とした空間に、ミッドセンチュリー家具が並ぶ。ここの特徴は、家具屋と共に作業場が並んでいること。ここもお店かな?と思うと、作業している人がいたり。売り手、買い手、そして作り手の境界のない空間使いがとても心地良かった。 “自分たちで作るというD.I.Y精神を間近に感じることができた。

近くでドーナツを食べ回復した私は、さらに休憩を重ねようと、数あるポートランドのコーヒーショップの中で最も足を運びたかったお店へと向かう。バスに乗り、街の中心街を抜け、川を渡りたどりついたその先に。


 

Coava Coffee Roasters – コアヴァ・コーヒー・ロースター

木工製品の工房が併設されたコーヒーショップ。とにかく広い。贅沢な空間が広がる。もちろんwifiも飛んでいて作業も出来る。湯本の某材木店さんがこのような形になるのを夢見ている私。


街を、歩く。 

街と自然が一体となったポートランドをたくさん歩いた。そこにはクリエイティビティがあった。ここでいうクリエイティブとは、「新しいものを生み出す」というものではなく、その場所にすでにあるものや天然資源に付加価値を生み出すという意味でのクリエイティブだ。訪れたほとんどが既存の建物をリノベーションした場所だった。
上質なコーヒーを自家焙煎するカフェで一息いれ、現地に住む人とシーフードを食べながら街の話を聞き、クラフトビールを飲んだ。訪れたどの場所にも個性があった。大手のチェーン店を見かけることはほとんどなく、この地ならではのお店が溢れている。
レストランでは近郊でとれた食材が使い、自らが経営する農場で収穫したホップでビールを作り、仲間たちと心地よいスペースで乾杯する。週末には、郊外の大自然へ飛び出すことだって出来る。ポートランドが「サステナブル・シティ(持続可能な街)」と言われる理由。

あるものを生かし生きる、無理をしない生き方や価値観。突き詰めていくと、豊かさの根源が見えてくる気がする。地方で暮らしていると「何もない」という声を聞く。本当にそうだろうか。楽しく豊かに生きていくには、「想像力」と「創造力」が必要だと最近よく思う。多くのヒントが溢れるポートランドに多くの人が足を運ぶ理由は、行ってみないとわからないかもしれない。願わくば、私ももう1度足を運び、3か月ぐらい住んでみたいものだ。


文・写真:Hidemi Miyamoto
いわき市小名浜生まれ。いわき、東京、ときどき海外。音楽業界での経験を活かし、エンタメは元より地域から福祉、教育までジャンルをまたいでコミュニケーションを生み出すプランナー。2011年、東日本大震災後に地域活性化団体「MUSUBU」を設立。2017年夏、2年間のニューヨーク生活を経て帰国。海と魚がある暮らしを楽しみ育む「umiiku」代表。無類のサッカー好き。http://musubu.me