冬になると、2年程暮らしていたニューヨークを思いだす。クリスマスモードで嘘のように煌めく街。これまた嘘のようなイルミネーションに彩られた住宅群。ニット帽と極厚ダウンに身を包み、白い息を吐きながら歩いた1月。外にいたら凍ってしまいそうなこの季節にぴったりのニューヨークの娯楽が、美術館巡りだ。

世界的にも有名な芸術溢れるニューヨーク。そこには大小あわせて、100以上の美術館や博物館があるという(どうりで行けども行けども制覇しきれないわけだ)。ニューヨークにいると、日本にいる時よりもアートが身近に感じられた。道路、公園、地下鉄。街中の至る所でパブリック・アートを見たし、チェルシー地区に無数に存在するギャラリーのオープニングレセプションを何か所も周り、振る舞われるワイン片手に友人たちとアートな夜を楽しんだこともあった。生活の延長線上にアートがあって、「公園に行こう!」と同じくらい、「美術館に行こう!」という選択肢が、当たり前のようにあった。様々な人種と文化がぐちゃぐちゃに混ざり合ったニューヨークは、行き交う人々の営みすべてがある種のアートのようだともいえる。

美術館が身近な理由として、こんな理由もあるかもしれない。いくつかのニューヨークの美術館は、日時によって無料や「Suggested Donation (任意の金額)」入れる日が存在するのだ。MoMA (モマ) の愛称で呼ばれる「ニューヨーク近代美術館」は、金曜PM4:00-PM8:00が無料だ。これはあのユニクロのスポンサードによるもので「UNIQLO Free Friday Nights.」と呼ばれている。
また、パスポートほどの効力はないがニューヨーク長期滞在者の身分証明書として一部で効果のあるカード「IDNYC」(ニューヨーク市発行の身分証明書)も美術館巡りに有効だった。様々なメリットのあるこのカード、映画館やテーマパークの割引などに加え、「アメリカ自然史博物館」など35もの美術館、博物館、動物園などが1年間無料だった。私もこのカードと美術館無料dayに、大変お世話になった一人である。

説明が長くなってしまいましたが、そろそろ私のお気に入り美術館をいくつかご紹介します。

 

1.メトロポリタン美術館The Metropolitan Museum of Art


ここは絶対に外せない。マンハッタンのアッパーイーストに位置する世界三大美術館のひとつ且つニューヨーク最大の広さを誇る「メトロポリタン美術館」。ピカソ、ゴッホ、モネ、フェルメール。あの名画がぁぁぁ!!!と叫びたくなるような作品が多数展示。さらにはヨーロッパ、アジア、エジプト、中東美術のエリアも大充実。その数、あわせて300万点以上。そう、1日かけても見て回れないレベルである。美術館は好きではあるが、アート知識が乏しい私はいつも、ひたすら好きな作品めがけてそのコーナーに向かい、周辺エリアも見ながら知見を広げる作戦をとる。少しずつ、少しずつ。
▲かの有名なゴッホ「自画像」。ガラスケースにおさめられ守られている。


▲現在、東京・大阪でも展示が行われているフェルメールの代表作「少女」

メトロポリタンと言えば、有名なのは展示だけではない。この大階段、見覚えありませんか。そう、数年前に一世風靡したニューヨークが舞台の海外ドラマ「ゴシップガール」のセレブ高校生たちが珈琲片手におしゃべりしていたのがこの場所。一度座れば気分はニューヨーカー。
ニューヨークの美術館は、撮影可能な場合が多い印象だ。おかげで私のスマホには名画写真が多数記録されている。

2.グッゲンハイム美術館 (Guggenheim Museum)


こちらもおなじくアッパーイーストに位置する、外観が印象的な「グッゲンハイム美術館」。カタツムリのような建物は、20世紀を代表する建築家と言われる巨匠・フランク・ロイド・ライト建築。建物の中は、巻貝のような螺旋構造になっていて、上からぐるぐると斜路を下へと降りながら作品を鑑賞する。どこを切り取っても、とにかく美しい建築物だ。

こちらもピカソやゴッホなど有名な芸術家の作品も並ぶが、この美術館のコレクション数が多いカンディンスキーや、ヘンリー・ルソーの作品が好みだ。中に入らずとも、外観を見るだけでも価値がある、グッゲンハイム美術館。

▲ロシア出身のアーティスト、ワシリー・カンディンスキー「Composition 8」

▲コミカルな作風が目をひく、ヘンリー・ルソー「The Football Players」

3.ニューヨーク近代美術館(Museum of Modern Art)

メトロポリタン美術館と並ぶ、人気の美術館といえば、マンハッタンのミッドウタウン53stにある「ニューヨーク近代美術館」。に「MoMA(モマ)」と言った方がピンと来る人も多いかもしれない。その名の通り、”近代美術(モダンアート)”を10万点以上コレクションしている。アンディ・ウォーホル、ピカソ、ゴッホなど、”こっ、これはっ!!!”と叫びたくなるような、誰もが一度は目にしたことのある作品が多数展示されている。

▲アンディ・ウォーホール「「キャンベル・スープ缶」」▲ZOZO前澤友作さんが123億で別作品を落札したことでも話題になった、ジャン・ミシェル・バスキア「Glenn」
▲館内最大の人だかりの先には・・・ ▲専属警備が付くほどの人気、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ「The Starry Night」
周辺には、デザインストアもあるので、こちらもぜひ足を運んでほしい。隣にはユニクロもあるので、寒さに耐えきれなかったら、ウルトラライトダウンを買いに行こう。 

4.モマ ピーエスワン(MoMA PS1)

「MoMA」の別館「MoMA PS1」は、建物も展示も取り組みも前衛的だ。場所は、マンハッタンから東に川を渡ったクイーンズ地区のロングアイランドシティというエリア(Amazon第2本社が出来ると話題沸騰)。名前の”PS1”はPublic Schooの略。そう、元々ニューヨークの公立小学校だった建物をリノベーションして現在の形になっている。1階のカフェや建物内にはその影が色濃く残る。

PS1に常設展示はなく、若手アーティストによる現代美術(コンテンポラリー・アート)が数か月ごとに入れ替わり展示される。いつ行っても、新しい。
夏になると毎年恒例となっている「Warm Up」という野外ダンスパーティーが美術館の中庭で開催される。注目のミュージシャンやDJが名を連ね、入りきれないぐらいの人が飲み、踊り狂う。20年以上も続くこのイベントは、ニューヨークの野外イベントの中でもよく知られたもの。美術館でダンスパーティー!なんて、ユニークな動きがあるのもニューヨークらしい。

5.番外編

「ブルックリン美術館」で毎月第1土曜に開催される「Target First Saturdays」も面白い。ライブにダンスにトークイベント。お酒を片手にフラつきながら展示品に触れそうな人を何人も見て、ニューヨークは寛容だな!と思ったものだ。

書きながら、あちこちの美術館へ行きたくなった。ニューヨークの美術館には、展示を見るというだけではなく”アソビ”が多かったように思う。子供たちが美術館の床に座り、楽しげに絵を描く姿もよく見かけた。そんな光景をみると、アートを見る以上に心が豊かになったような気もした。

あぁ、またふらっとニューヨークの美術館に行きたい。そんな願いもしばし叶わなそうなので、しばらくは、いわきにありながら壮大かつ寛容で、遊びが溢れる野外美術館「いわき回廊美術館」で、心身共に癒され、心穏やかに冬を暮らしたいと思う。

 


文・写真:Hidemi Miyamoto

いわき市小名浜生まれ。ニューヨークを経由し、現在いわき・東京2拠点生活。音楽業界での経験を活かし、エンタメを軸に地域から福祉、教育までジャンルをまたいでコミュニケーションを生み出すプランナー。2011年 東日本大震災後に地域活性化団体「MUSUBU」を設立、いわき発信で様々なプロジェクトを行う。海と魚がある暮らしを楽しみ育む「umiiku」代表。無類のサッカー好き。http://musubu.me