昔ながらの昭和の大工の棟梁が建てる家。どんどん高齢化して大工さんが少なくなってきている昨今、ちょっと懐かしいような佇まいにホッとする方も多いのではないでしょうか。今回紹介するのは、そんな古き良き日本の純和風住宅。柱がしっかり支える、棟梁の建てる家。
今回の建主様は築40年の建物が震災で半壊し、立て直すことになったご家族。ご主人と同世代のいとこが、粒来工務店の粒来棟梁とあって、粒来工務店が設計・施工するのは暗黙の了解の元。お互い言いたいことは言い合いながら、住む人にも訪れる人にも優しい和の家になりました。
玄関を入ると今は珍しい畳敷きの上がり間。入ってきた人、帰ってきた人がホッとできるようにと棟梁の計らいです。框には欅、そして畳。和の素材をふんだんに取り入れつつ、質実剛健な空間を作り上げています。日本ならではの素材なので、日本特有の湿気に強く、調湿性に優れています。
そして、家を支える大黒柱と恵比寿柱。こちらはおそろいで夫婦のように建てるのが習わしで、構造上もお互い支えあっている柱なのですが、最近ではあまり見かけなくなりました。「家の守り神みたいなもので福を呼ぶ縁起物なんだ。俺の作る家にはみんなあるよ」と棟梁。
1階は高齢のおばあちゃんと建主様ご夫婦、2階は息子さんとゾーニングしつつも「家族は一緒が一番!」と棟梁の一声で、水回りなどは共用になりました。大黒柱と恵比寿柱に支えられた二世帯の暮らし。その日本の柱のように、しなやかに強い家族の絆を育んでくれそうです。
右手が玄関口。欅の框から畳の上がり間へ続く和の趣と木の香りが訪れる人を和ませます。中心にある柱は大黒柱と対になる檜の恵比寿柱。縁起がいいようです。
天井板や建具は杉で造作しています。天井の桟は桜の皮付き。壁は京聚楽壁(写真左)。こちらは9寸檜の大黒柱。上がり框も巾木も欅で造作しています。棟梁の作業場で10年以上乾かしていたもの(写真右)。
こちらはリビングダイニングキッチン。生活する場は洋風のスタイルで動線よく。天井も高く開放感を。
広いキッチンにはダイニングテーブルを設置予定。食はここですべて完結できるように。
おばあちゃんの部屋は和室にベットを置いて。神棚と仏壇もこちらに。トイレなど水回りも近くに配置されています。右手の柱は玄関の欅の大黒柱の裏側。
洗面脱衣、お風呂、トイレなど高齢者に配慮し介護しやすいよう広めにとってあります。
杉の軒桁、垂木、破風、柱は檜、屋根は銅板で格式高くまとめています(写真右)。作っている間も通りがかりの人がたくさん見に来てくれて、「うちも建ててほしい」と言ってもらえて嬉しいと粒来棟梁(写真左)。