家について全く知識もなかったし勉強もしていなかった、という建主さまが家を建てるにあたり勉強し考え抜いてたどり着いた家のカタチは「つくりこまない家。未完成のまま一緒に成長し、年を重ねていく家」でした。
家のレイアウトは変えられないから、大枠で間違っていなければ設備は後から足せばいいと思った。まだわからない先のことに備えるよりも今必要なこと、ものを優先し、その時々自分たちで変えられるように。考え方や嗜好ってどう変わるかわからないから。」と建主さま。ご夫婦で自分たちの生活をじっくり見つめなおし、「どういう暮らしがしたいか」話し合い必要なものを選び、いらないものをそぎ落とすという作業をきちんと突き詰めていきました。
「最初にいただいた資料が整理されていてイメージがつかみやすかった。」と設計士。しっかりしたお考えをお持ちの建主さまが信頼できるパートナーを見つけた結果日本の民家や数寄屋に通ずる、どこか懐かしい、簡単で素朴な材料でつくる豊かな空間になりました。
≪備考≫
日本木材青壮年団体連合会主催 第11回 木材活用コンクールで優秀賞((社)全国木材組合連合会会長賞)
建築士会ふくしま住宅コンクールで優秀賞受賞
閑静な住宅地に、ひときわ目を引くけど決して浮いていないという離れ業的外観を持つこちらのお住まい。杉の羽目板を黒く塗装した外観は、年月とともに表情豊かに成長します。
家のどこからでも見えるガレージ兼趣味室が第一条件。丸太の梁がダイナミック。
モッコウバラが植えられたエントランス周り(写真左)。ガレージのロフトは2階寝室につながる(写真右)。
ー天井高を抑えた室内ー
室内も杉を基調にあたたかみのある空間。階段横は一階から2階まで続く本棚。天井高は2,100に抑えて落ち着きのある空間とした。
開放感のある吹き抜け。家の高さは最高でも6,500ほど(写真左)。建具は和のテイストで。手洗いの水栓は病院の手術室用(写真右)。
造り付けのキッチンはコンパクトながら、キッチン後ろのバックヤードが充実しているので便利に使える。
露天風呂感覚のバスルーム。今でも外からは見えないがこれから植栽を充実させて目隠しに。
わたり廊下のあるオープンな2階。本棚の本を取りに行く時は手摺を倒す仕組み!
ー和室の明と暗ー
地窓、そして裸電球の和室。何もないのに豊かさを生むのは計算されつくした高さ。地窓は4か所あり決して暗くはない。
和の趣が、和洋折衷という言葉を超えて織り込まれている。
ー設計のポイント/KD設計 佐藤大【※現:(株)佐藤大建築事務所】ー
◎地産地消
いわき産杉材多用(横架材含む構造材、板材、化粧材)による「杉普請」の家。
◎意匠と性能
日本住居のセオリーに則った深い軒で、日射しをコントロール。
東西面の開口部を最小限のスリット状とし、温熱環境負荷の軽減。
スリット窓上部には屋根換気口を設け、軒下いっぱいまでのラインを出すことで意匠性を高めた。
◎高さ(階高2400mm、軒高5250mm、最高6520mm)
北側隣地への配慮、安定感と品位あるプロポーションの創出。
室内空間構成のメリハリとバランス。
高さ抑制はイニシャル&ランニングコスト、メンテナンス性にも好条件となる。
◎回遊性、プライベート動線、客人をもてなす空間演出、遊び心、生活を愉しむ工夫
シューズインクロークやウォークインクローゼットは家族専用の動線を確保し、かつ回遊できるよう配慮。
吹抜を埋めつくす書棚の足場となる、ぱったんこ手摺。薪ストーブ。にじり口。離れを演じる和室。
天窓とその下は物干や鉢植えエリア等多目的なインナーテラス、趣味室土間につながる階段。
DIYで改造可能な大空間の趣味室は、内外領域自在の空間を意識して開口部に配慮。
スイッチ類は施主自らドイツのホームセンターで購入。趣味室は納屋をイメージし碍子配線を採用。
◎明と暗
南面吹抜の大開口とトップライトによる、一日中明るいリビング。和室は明と暗の領域を感じるべく、全て地窓とした。
人工照明は華美な装飾を廃除し、フィラメントから溢れる灯りを大切にしている。