環境省が低炭素社会の実現に向けてエコハウスを普及するため、全国につくったモデルハウス。全国20カ所の中に飯館村が選ばれ、コンペの結果、豊田設計事務所が設計を担当しました。「までい」とは、手間ひま惜しまず、丁寧に、という飯舘村の言葉。その言葉通りのエコハウス。
福島県相馬郡飯舘村。阿武隈の山並みに囲まれた小さな村は、「までい」という言葉に導かれるように、山の恵みを活かしながら、豊かな暮らしを営んできました。エコハウスの設計を担当した豊田設計、豊田善幸さんが飯舘村の暮らしぶりをカタチにしたのが、この「までいな家」です。
地域の気候風土や敷地の条件、住まい方に応じて自然エネルギーが最大限に活かされることと、さらに身近に手に入る地域の材料を使うなど、環境に負担をかけない方法で建てられることがエコハウスの基本となります。低炭素型田園ライフの実現のため、菜園、農作業場、アート活動等の多様なクリエート空間を用意し、「半農半Ⅹ型」のライフスタイルを堪能できるエコ田園住宅で定住、移住を促すことも目的としています。
「までいな家」の家具はスギの無垢材でつくられています。スギの無垢材といっても、カウンター用などではなく床に張るフローリング材を転用。フローリング材は、端部にジョイントの加工があり、幅広な板が必要な場合は材料を複数枚継いでいくことで簡単に板がつくれますし、幅の狭いものをつくる際にも端材などの無駄が出にくいといいます。
一般的に、家具は工場で製作してから搬入しますが、フローリング材なら大工さんの道具を使って現場で加工組み立てができるので、輸送のエネルギーも使いません。まさに「までいな家」にふさわしい工法といえます。化粧面材が貼られた家具はいつまでも同じ色をしていますが、この家具は内装の木部と一緒に落ち着いた色に変色していきます。時間と共に家具が建物に馴染んでいきます。
もちろん、表面の柔らかさや汚れやすさなどのデメリットも。今回採用したスギ板は、表面に高熱と圧力を加え表面硬度を上げた床用の素材のため、一般のスギ材よりは傷が付きにくくなっています。ウレタンなどを厚く塗れば汚れ防止にはなりますが、せっかくの無垢材の魅力が半減してしまいますので、自然系塗料仕上げにとどめています。
設計を担当した、豊田設計事務所の豊田善幸さんは、「までいな家には『大切に扱い長く使い続ける』ことを次世代に伝えるという大きな目標があります。家具部分も丁寧に扱っていただき、長い間の傷や汚れが味わい深く見える日が来ることを期待しています」と語っていました。
宿泊棟の室内にある石を積んだ謎の箱。冬に直射日光を取り入れ石に蓄熱させ、日が陰ったら静かに放熱する予定。パッシブエネルギーを取り入れる様々な実験的な取り組みをしています。
玄関入ってすぐの土間左手に集会のできる続きの和室。右手はキッチンとまきストーブ。温水は薪ボイラーで沸かします。沸かしたお湯を床下に回す全館暖房システムです。
補助的に使う予定のまきストーブの周りにも石を積んで熱を蓄熱させます。
採光と高さに気を配った和室。
キッチン前には飯館小学校の子供たちの手によるストーンアートを記念に飾りました。
桧とサワラのお風呂。大胆にガラス張り(写真左)。 管理室。テーブルや棚など家具に杉のフローリング材を使用(写真右)。
2600平米の敷地には農作業ができるスペースやモノづくりができる生産のスペースがあり半農半Xを体験できます。
作業体験棟。あつ密すぎが「身近に手に入る地域の材料」として様々な形で使われています。