いわき市平の住宅街に、大きな平屋の和風邸宅が完成しました。敷地の中心には、ひょうたんの形をした大きな池。その池を取り囲むように、広々としたリビングや複数の客室、お風呂などが並んでおり、旅館や料亭かと見間違うような豪華仕様。まさに邸宅と呼ぶにふさわしいお住まいです。
お施主さまのリクエストは「会社の同僚や友人たちが気軽に集まれる和風の家」というもの。そこで伝統家屋を得意とする平子棟梁が提案したのが、おもてなしの心を伝える重厚感と高級感のあるL字型の現代和風の住宅。お部屋のあちこちに、これぞ日本家屋という伝統の技術が活かされています。
まずは玄関からご案内しましょう。

玄関を入ると、威厳のある甲冑と、どっしりとした存在感のある化粧柱がお出迎え。お客様をお迎えする玄関なので、季節の花々や絵画を飾れるようにとしつらえました。

約25帖の広々リビング。太い大黒柱と梁がどっしりとした存在感を醸し出す「現代和風」な仕上がりです。天井高はおよそ6mと高く、採光のために天窓もしつらえました。廊下とリビングを仕切る障子をすべて開け放てば、美しい庭が一望でき、友人や同僚たちと団欒の時間を過ごすには最高の空間となりました。

一間廊下。写真右手が玄関です。リビングを取り囲みながら、客間や風呂場へと続きます。写真右手の天井は秋田杉の目透天井、壁は砂聚楽仕上げ。このあたりにも伝統技術が活きています。
最近のオープンな洋風住宅では、廊下を設けない家も増えていますが、廊下は決して無駄な空間というわけではありません。プライベートとパブリックを分け、お部屋の独立性を保つ役割があります。お客様が数多く訪れることを想定するこのお宅だからこそ必要なものでもあります。
人が2人行き交っても狭く感じないようにと、廊下の幅は一間(約1.8m)と広くとりました。日本の住宅の場合は三尺(約90cm)がほとんどなので、ほぼ倍の広さ。まるで寺院や神社のような、どっしりとした雰囲気。車いすの方が行き交うにも充分な広さです。
廊下の床材には清潔感のある白色系のカバザクラを使用。天井高も2700mmほどあり、かなり開放感があります。縁側の窓には葦簀(よしず)を下げ、効果的に光を遮りつつ、和の雰囲気を充分に感じさせる空間に仕上げました。絵画や陶器などを置ける飾り棚もあちこちに。

工芸品や絵画の好きなお施主さまのために、客間の続く廊下にも石敷きの床の間を用意しました。和の雰囲気がぐっと深くなります。まるで伝統ある料亭や旅館の廊下のよう。絵画も見事です。


縁側の大窓には「よしず」を(左)。柔らかく光を遮り通気性もよいので、夏の暑い日などに室内が蒸し暑くなるのを防ぎます。壁が単調にならないよう、一間廊下の最奥部分にも飾り棚をしつらえています(右)。化粧柱や棚の装飾にも、棟梁のきめ細やかな技術が伺えます。

囲炉裏テーブルのある客間。写真右手の障子を開け放てば、広いお庭も一望できます。畳は琉球畳を使用しており、縁がないので部屋をより広く見せてくれます。奥のふすまを開ければ寝室に。

角部屋の和室。ヒバを使った雪見障子が風流です。スギの一枚板を使ったテーブルも部屋の雰囲気にぴったり。

パネル状にカットした大谷石を使用した贅沢な浴槽。ここからもお庭が見えます。洗い場も広くゆったりしたバリアフリー仕様。余裕を持ってゆっくりとお風呂で温まることができそうです。

住宅の設計と施工を担当した平子工務所の平子社長。

お庭がよく見える「L字」の構造。家の壁から2メートル近く軒を出しているので通路も雨ざらしにはなりません。雨の日もゆったりと眺望を楽しめるような回廊になっています。


神社に使われるような銅の雨樋(左)と、銅の木口隠しが使われた伝統様式の門(右)。門をくぐった瞬間に、静謐な和の空間が始まります。

外壁の仕上げは珪藻土の櫛引仕上げ。手間がかかる仕上げですが、平子社長の「伝統技術を後世に残したい」という思いを汲み取った左官屋さんが、美しく仕上げてくれています。

新潟から錦鯉の到着を待つ大きな池。植栽・造園もこれから仕上げに入ります。