日本の伝統建築を得意とする平子工務所さんが手がけたのは、シニア世代でも移動しやすいように段差を減らし、慣れ親しんだ和室を多めに取り入れた和の家。奇をてらうことなく「暮らす人の心が安らぐ場所」という、住まいの本質を第一に考えました。質実剛健なお住まいです。
1階のリビングは、さまざまな人が集まるため、オーソドックスな洋風スタイル。ですが、1枚ふすまを開ければ、その隣には二間続きの和室が。茶の間として、あるいは客間としても使うことができますし、ふすまをすべて開け放てば、親戚やご友人が集まっても充分な広さの「大広間」に。住み慣れた和室は、お施主さまの希望でもありました。

シンプルな洋風のリビング。奥に二間続きの和室が連続します。

和室の奥から撮影。写真手前は客室として、リビングに近い和室は茶の間として使うことを想定。ふんわりと畳の香りが漂います。

和室は、八寸角のヒノキの柱が支えます。引き戸や障子にはヒバを使うなど、和風建築を得意とする平子棟梁のこだわりが見え隠れします。その一方で、天井はスギではなくシナ合板の目透かし張り仕上げ。「コテコテの和風だと少し重くなるから、スッキリしたシナを選んだ」と平子棟梁。臨機応変に素材を選ぶ選球眼が光ります。
廊下はすべて4尺5寸(1365mm)幅と、通常より広め。車いすも楽々通ることができます。脱衣所の入り口も、2枚の扉の連動引き戸を採用。同じ広さの間口でも、連動引き戸のほうが開口部が広く取れるので出入りが楽。誰かが車いすの生活になったとしても、できるだけ快適性が損なわれないよう、将来を見越したバリアフリーになっています。
廊下や客間の窓には、クレセント(三日月の形をした鍵)のない「クレセントレス」タイプを使っています。鍵が内側に隠れているので「ガラス破り」にも強く、防犯の効果もあります。また、デザインがシンプルなので重くなりませんし、窓を閉めれば鍵がかかるので、鍵の駈け忘れの心配もなし。住む人の年齢に目を向けた親切設計の家となりました。

使い勝手もよくシンプルなキッチン。壁側の棚と水回りの間のスペースもゆったりめに確保してあるので移動がしやすいのが特徴。


階段下収納もたっぷり(左)。2枚の扉が連動する引き戸(右)。開口部が大きく取れるので、車いすを利用するようになってもスムーズに脱衣所に出入りできる。生活動線が広めなのが、このお住まいの特徴です。

2階も二間続きのお部屋が。畳を敷いた和洋風のデザイン。お子さん、お孫さんなど大人数で泊まりにきても余裕の広さです。

2階にしつらえられた大容量のウオークインクローゼット。布団もたっぷりしまえます。

こちらがクレセントレスの窓。あるべきところにクレセント(錠)がないので、とてもスッキリ。防犯の役にも立ちます。クレセントレス窓、これから増えそうですね。

いわき市平の市街地を見下ろせる絶景のロケーション。これを活かすのもクレセントレスの窓。眺望のよさを活かしました。

どっしりとした和風の外観。ゆったりとしたスロープになっており、車いすでも安心して中に入れるバリアフリー仕様。