市内の山間部に、広い宴会場を備えた料理店として地元に愛され営業してきた店舗がありました。しかし店主の他界により惜しまれつつ閉店。そのまま月日が流れてゆきました。
父(店主)が作った家族の思い出がつまった店舗を、なんとか壊さず居住できるようにならないかと、親族の方からご相談がありました。
広い建物なので、すべてをリフォームすると高額な費用がかかります。住まいの要望と予算を伺い、プランニングと概算を通して、部分的なリフォームを行うことになりました。
大規模な店舗を居住用にどう改修し、ご家族の思いをカタチにしたのか・・・。
プランニング、施工過程はこちらからご覧になれます。
お店を閉めてからは、娘さんご家族が子どもたちの遊び場や物置として利用していましたが、基本的には誰も居住していませんでした。壁、天井、床が剥がされると立派な躯体が現れました。お父様がこだわって吟味した銘木などもできるだけ再利用します。
山間部ゆえ、
外観は以前とほぼ変わらず。数寄屋造りの立派な建物です。
お店の顔であった玄関は16畳と一般住宅では考えられない広さです。大きさを活かしフレキシブルに使える部分と、「見せる」部分を分けました。こちらは立派な床柱やケヤキの一枚板、座敷の床框を再利用した玄関框、杉の腰板など「見せる」木材がふんだんに使われています。
玄関を入ると収納。シナベニヤとケヤキの無垢板でシンプルに仕上げています。絵を描くことが趣味の奥様の作品が引き立ちそうな大きな飾り棚。
玄関からリビングダイニングへは段差を設けてドアで仕切ります。左手は今回手を入れなかった和室部分(現在は納戸として活用)。
木や左官材などの自然素材を利用したいというご要望から、予算に応じて、各種利用する素材を選定しました。リビングダイニングや水周りには、調湿機能のある中霧島を左官仕上げしています。床は白樺フローリング。
右手奥には薪ストーブ置き場が設えられています。相談当初から薪ストーブは必須条件でした。
リビングの一角に区切れる4畳の和室スペース。仏壇もあります。
乳半色のアクリの襖で個室にもなります。ゆっくり落ち着きたいときはこちらで。
ダイニング横のキッチンへの入口は、ドアを設けてあるので閉じたり開いたり、見せたり、隠したり、臨機応変に対応できます。
キッチンは以前は厨房だったのでこちらも約11畳あります。家事スペースも設け、奥様の家事を一極化しています。
キッチンから続く土間はパントリーや物置、洗濯干し場として活用。以前は室内から屋根裏部屋への階段がありませんでしたが、今回は室内に設けて利便性アップ。
こちらも相談当初から要望の高かった「木の浴室」。ハーフユニットバス&ヒバで気持ちよく入浴できそうです。
窓まわりに以前の和室の面影を残した主寝室。間接照明としベッドヘッドには、スマホ充電コンセントつきカウンター。大容量のウォークインクローゼット付。
子供部屋にも大黒柱を見えるように残しました。窓からは里山ののどかな風景が広がります。
工事費を削減するのと今後の維持管理も考え、床は、ご家族とアツシ建設の現場監督と設計担当の北瀬さんが塗装。生まれ育った地に建つ、思い出のたくさん詰まった建物をリノベーションし、お子様との新生活が始まりました。