―環デザイン舎 北瀬幹哉―
小川の自然豊かな山間に経つ、築250年以上の古民家を、断熱&バリアフリー改修した住宅です。
建主様は今年で90歳になる母親を在宅介護していましたが、ほぼ車いす生活のため、段差が多く広い古民家では、介護が大変不便でした。玄関から左側(西側)の昔土間だった部分を以前リフォームしており、日中の生活拠点でしたが、冬は寒く、小屋裏に小動物が忍び込み駆除なども大変で、大きな古民家での住まいに苦労されていました。
母親の介護とお施主さんの老後を考え、冬温かくバリアフリーな新築も検討しましたが、先祖代々の古民家に愛着があり、解体ではなくリフォームの方法を検討されていました。ハウスメーカーによるリフォーム見積は、面積が大きいため高かったことと、古民家特性や介護のしやすさを考慮したプランが欲しかったとのことで、悩まれていました。
そんな時に相談を受け、昭和に増築された部分は劣化しているので解体し、玄関より右側(東側)のエリアを断熱区画改修範囲としその中で生活が完結する間取りとすることで、建設費を下げ、バリアフリーへも対応する提案を行いリフォームすることとなりました。
古民家の間取りは、いわきに昔からある民家の間取りで、いわき市暮らしの伝承郷へ行くと、類似する間取りが多数あります。旧プランで納戸だった部屋は、居間や床の間などと比べると簡易な材料で作られていたこともあり、旧納戸を新たに浴室、便所、洗面へプラン変更することで材料を更新し、寝室からも近くすることで介護や日常生活の移動距離を短くすることができました。
広間居間には、以前の改修時に天井が張られていました。お施主さんは、子どもの頃、大きな梁を見上げながら生活していたので、今回の改修で梁をまた見たいという要望がありました。そこで、梁を現しとし、天井には、断熱材を約200ミリ、壁と床には120ミリの断熱材を充てんしました。
古い建具は再利用し、保存されていた遠野和紙が充分障子紙として使える状態として残っていたので、利用しています。
元々250㎡あったところを、33㎡減築し、138㎡を断熱区画し改修。
天井は取り外して大架構の梁を現しにし、天井高のある大空間に。
漆喰の白と、250年の時を経た木材の黒の対比。
右手のドアの奥は和室をぐるりと囲む広縁。
こちらが広縁。
北側からリビング方面を見る。左手が和室二間、右手が玄関。
障子は建主様が大切に保存していた遠野和紙を使用。
お母様の寝室から洗面脱衣へすぐ出入りできる配置。
車椅子で出入りできる水回り。左手がトイレ、右が洗面脱衣。
お風呂はバリアフリー造作浴室。
リビングの北側の台所。
改修部分の外壁は杉の下見板張り仕上げ。