いわき市中央台の一角。閑静な住宅街に建つこちらのお宅で、昨年の春から秋にかけ、築33年の住宅の大規模なリフォームが施されました。お母様と同居することになり、急遽、立て替えかリフォームかの二択を迫られたお施主様。子どもたちの暮らし、妻の要望、お母様との同居、さらには予算。いろいろな条件を考慮した末に選んだのは・・・
旦那様より
生まれ育った家で、もう一度母と同居することになり、新築かリフォームかで悩んで後ましたが、後田さんから提案があったのが新築ではなくリフォームでした。まずはコストの面。それから、ここに暮らしてきた記憶を引き継ぐということ。その2つの要素が大きかったですね。
間取りや性能については、具体的に「こういう家に」という強いリクエストがあったわけではありません。ただ、元の家はすごく寒かったんです。冬になると結露もよくできてしまって。だから温かい家がいいという話はしていました。
間取りも開放的になりました。前は6畳の部屋が1階と2階に2つずつあって、それぞれの部屋がすべて扉で仕切られていたんです。わたしはずっとこの家で育ってきたので、これが普通だと思ってきましたが、こうして仕切りが取り払われると、とても開放感があるし、それでいて、「ああ、前はここに階段があったなあ」とか「ここが台所だった」なんて思い出すこともできる。前の家の面影があることを、母も喜んでるようです。
奥様より
わたしが嫁いで来た頃から、正直、やっぱり冬は寒いなと思っていて。特に台所がとても寒く感じられて、行きたくないなって思ってました。それから、暖房が入っている部屋に家族が固まっているので、せっかくお部屋があるのに、全然家を広く使いこなせていませんでしたね。今は、すごく広く家を使えてる気がしますし、子どもたちも、小上がりの畳スペースがお気に入りでリビングに集まってくるので、世話がしやすくなりました。
あとは収納がとても使い易くなりました。前の収納スペースをみんな潰してしまったので収納大丈夫かな、しまいきれるかな、なんて思っていましたが、段差を利用した収納とか、思った以上にスペースが豊富で、しかもそれが細かくいろいろなところにあるんです。でも、それに甘えちゃいけないと思って、モノをたくさん買わないようになりました。この家に住み始めて、生活そのものがシンプルになった気がします。
【 玄 関 】
玄関は白を基調に明るく、収納も増やして使いやすく。
【 洗 面 所 】
洗面所は造り付けの棚を設けて家事もしやすくなった。
【 キ ッ チ ン 】
個室で寒かったキッチンはLDと一緒に使えるよう生まれ変わった。
【 二間続きの和室 LD 】
1階の二間続きの和室は小上りの和室とLDへ。 小上りの下部は収納になっていてお子様のおもちゃ類もスッキリ。
旦那さまのリクエストで、リビングには小上がりの和室を。コタツがどうしても欲しかったそうなのですが、今は前ほど寒さを感じないのでコタツが必要なくなったとのこと。
一部壁材としてイエローラワンの合板を使用。後田さんいわく「コストをおさえながら、適度に木目の風合いが出るので壁材としてとても合理的」。落ち着いた印象に。
白いクロスを貼ったリビングの壁は、単調にならないように杉の角材をあしらってアクセントをつけています。温かみを出しつつ、空間をぎゅっと締める効果も。
【 2 階 】
昔はご主人の部屋だった2階の和室は将来2部屋に区切れる子供部屋に。
2階の主寝室。ご主人の希望で飾り棚とウォークインクローゼットを。
後田工務所 後田哲男社長より
大前提として半二世帯住宅ということでしたので、まずは間取りを大幅に変えました。お母様との同居ということで、玄関は2つに分けたうえで、お母様のスペース、息子さん家族が暮らすスペースを区切りました。もともとコンパクトな家でしたが、仕切りが多くて広く使えていなかったんですね。仕切りを減らして動線を意識した間取りにすることで、コンパクトでも使い勝手のいい間取りになったと思います。
リフォームは正直なところ「蓋を開けてみないとわからない」ということがよくあります。このお宅の場合、まずは家の傾きがありましたし、壁を剥がしてみると断熱材の腐朽やシロアリ被害なども見つかりました。工事はとても大変でした。ニュータウンが造成された時期を考えると、まだ断熱のノウハウが固まっていなかった時期で、この時代の家は施工の甘さが目立ちます。断熱材はしっかりと施工しないと意味がありません。ですから大規模な断熱改修によって、家の性能を上げることを最重要視しました。
実は、私自身、断熱改修にとても可能性を感じているんです。前の暮らしがイメージしやすい分、家の性能があがって快適になったことをより強く感じてもらえますし、なぜかリフォームのほうが、お施主さんの喜びが大きいように感じています。やっぱり住み慣れた住まいの記憶を引き継ぐということに、喜びを感じて頂けるからかもしれません。前の家と比べながら、新しい住まいを喜んで下さるというのは、設計士冥利に尽きますね。