いわきの暮らしのコラム
インテリアは家族とともに成長する
輸入家具専門店 木楽館 代表 鈴木 聖洋さん

新しい住まいでの生活を考えると気になってくるのが家具。家の雰囲気に合う家具選びや、新しく購入したインテリアの配置など、なかなかうまく決まらないという方が多いかもしれません。そこで今回は、いわき市で輸入家具店「木楽館」を営む、インテリアコーディネーターの鈴木聖洋さんにインタビュー。鈴木さんのこれまでの歩みを紐解きつつ、インテリアとの「理想のつきあい方」についてお話を伺ってきました。


いわき市平の中心部から少し離れた材木町。静かな住宅街の一角に輸入家具専門店「木楽館」があります。イギリスやオランダ、イタリアなどから取り寄せた家具や照明、雑貨などが並べられ、一歩足を踏み入れると、古い洋館に迷い込んだような不思議な居心地のよさを感じることができます。

社長を務めるのが鈴木聖洋さん。社長を継いで今年で7年目。家具の業界に入って30年以上の経験をお持ちです。昨今、首都圏や東京都内でも西洋家具専門店の閉店が相次ぐなか、その専門性と抜群の目利きが評価され、インターネットでの販売も好調。SNSにもいちはやく注目し、さまざまな情報発信しながら、いわき市唯一の輸入家具専門店を守り続けています。

10s今年創業98年目を迎える木楽館。かつては国産の高級家具を取り扱うお店だった。

8s2階建ての店内。ところ狭しと家具や雑貨が並んでいる。ずっと見ていても飽きない、居心地のよい空間。

 

木楽館はあと2年で創業100年目を迎えます。祖父の代で創業して私で3代目。私が戻ってきたのは24歳のときですから、もう30年以上家具に関わっていることになりますね。実家に帰ってくる前は、東京でカメラマンをやっていたんだけど、父が「もう店を閉めるんだ」なんて言うもんだから、それなら店を手伝おうかなと思って帰ってきて。それで1、2年手伝ってまたカメラマンに戻ろうなんて思っていたら、それがもう30年以上になっちゃいましたね。

もともとうちは総合家具をやっていたんです。カリモクさんとかマルニさんとか、いわゆる国産の一流品。あとは婚礼ダンスですね。昔は「注文家具」なんて言ってね、父は好間に工場も持っていましてね、婚礼ダンスを注文しに来る人が「うちの娘のためによろしくお願いします」なんてお菓子を持ってくるような、家具屋って昔はそういう仕事だったんです。

でも大きな総合家具のお店があちこちにできてきて、ここはたったの120坪ですから。ほかのお店の10分の1くらいしかありません。商品数も商品の種類も、やっぱり大型店には負けてしまう。そこで輸入家具はどうだろうと企んで、ある時期に在庫の国産家具を徹底して処分したんです。ところが婚礼ダンスのセットがどれだけ値引きしても売れ残ってしまって。

そんなとき、「下取りするよ」というオファーがあって、これは渡りに舟だと大喜びしました。でも、話をよく聞いてみたら「お金じゃなくて物々交換しよう」って言うんですね。そこで交換して頂いたのがオランダ家具でした。それはもう最高の家具ばかりでしたよ、すばらしいオーク材が使われていて、思わず見とれてしまうくらいの。これからはこういう家具で勝負しよう、専門店を目指そうと、そのときに路線が決まったんです。

2s忙しいなかインタビューに応えて下さった店主の鈴木さん。いちはやくネットやSNSを取り入れる、いわきのIT会のアニキ的存在。

 

鈴木さんたちがそのときに「輸入家具」に目を付けたのは、それが高級だからという理由だけではありません。西洋人の「家具とのつきあい方」に、鈴木さんご本人が魅力を感じたからだといいます。23歳の鈴木さんが2年間移住したアメリカに、そのルーツはあります。

カメラマン時代に2年間アメリカのサンフランシスコに行っていたんです。当時、よく外国人のモデルを撮影してたんだけど、英語が全然ダメで、外国人と向き合うのが苦手でね、外国人ビビりっていうのかな、それでうまく撮影できなくて、それでとにかく慣れないと駄目だってことでとにかくアメリカに行こうと。会社に休みもらって1年・・・・の予定が2年になっちゃったんだけど(笑)。

ホームステイ先のご夫婦がたまたま著名なお医者さんの家でね、とても豊かな暮らしをされてて、そこでいろいろな影響を受けました。家のなかには小さなプールがあって、そこにスイングする椅子が天井からぶら下がってるんです。私はそのすぐ脇のリビングの床で寝てたんだけど、夜になると、ご夫婦が家の中を真っ暗にして、そこでワインを飲み始めるんですよ。小さな間接照明だけで、ゆったりと椅子に揺られておしゃべりしてるんです。

それがほんと不思議な、でも豊かな暮らしだなと思って見ていました。そんなに暗くして大丈夫かっておじさんに聞いたら、「夜が暗いから朝の光がうれしいんじゃないか」なんて格好いいこと言うわけですよ。確かにその家には大きなサンルームがあって、朝になると本当にきれいな朝の光が入ってくる。そこに子供たちがグッモーニンなんてやってくるんです。こういう生活感っていうか、自然に寄り添ってゆったりと家の暮らしを楽しむというのかなあ、そこに大きな影響を受けました。

私がずっと輸入ランプを手がけているのは、あのときのあの思い出があったからでしょうね。夜になったら部屋を暗くしてランプを1つつける。暗さもいいし、ランプのほんのりとした明るさもいい。そこで特別なことをしなくても、それだけで満ち足りた時間を過ごすことができるんです。家具と一緒に、ゆったりと人生を楽しむ。そのコツみたいなものを、アメリカで学んだかもしれませんね。

9s鈴木さんが惚れ込むティファニーランプ。ニューヨークの宝石屋「ティファニー&カンパニー」の創始者ティファニー氏の長男で、ガラス工芸家のルイス・C・ティファニーが手がけた。6s店内には由緒ある作家が制作したランプがいくつも並んでいる。鈴木さんが本当に気に入っているものは「非売品」のタグがついている。

 

アメリカで「暗さの美学」を学んだ鈴木さん。家具店の経営に関わるようになってからも、照明には特にどっぷりとハマっているそうです。現在も高い人気を誇るティファニーランプや、1890年~1900年代に活躍したイギリスのミューラー兄弟のランプなど、貴重な商品を買い付け、鈴木さん本人も楽しみながら、お店を訪れる人たちにその魅力を伝えています。

ティファニーランプは素晴らしいです。金属のこの美しい曲線を見て下さい。現代の方が設備も機械も発達しているのに再現できないんですから。それだけに、いいランプを仕入れるのは大変です。もともと数が少ないから「日本人なんかに売ってたまるか」ってあっちは思ってますから(笑)。でも、価値のあるものだから守っていきたいし、皆さんにもその魅力を届けたいと思っています。

欧米の人たちが皆口を揃えていうのは、「日本の住まいは明るすぎる」ということですね。確かに、あちらは日本のような蛍光灯なんてほとんど使いませんよ、特に家庭では。日本では今白熱灯を廃止してみんなLEDにするんだって議論が進んでるけど、ミューラーのランプをLEDにしたら決まらないなあ。あの白熱灯だから、じわーっと光って闇を楽しめるんですよ。

宝石店を経営している人がいるんだけど、今まではハロゲンランプを使ってたのに、店内の照明を全部LEDにしたらしいんです。そうしたら「売り上げが減っちゃった」って相談があって。それはそうですよ、ショーケースからダイヤを取り出して、キラっとした輝きを目の前にするから思わず欲しくなっちゃうわけでしょう? それはハロゲンのランプだからです。

結局、そのお店は最終的にはショーケースの上のランプを全部ハロゲンに戻したそうです。そうしたら雰囲気が以前のように戻って安心したって言ってましたね。そのくらい照明というのは大事なんです。それに、クラシックなランプというのは白熱灯の明かりだからこそ美しく見えるようにデザインされてますから。

ティファニーランプもね、あのゴールドのゆらめくような輝きはLEDでは出てきません。白熱灯だからこそ心が癒される。そういうことは確かにあると思います。

家具にしても同じで、例えばウォルナットの木目なんて、白熱灯に照らされたときの光沢はやっぱり素晴らしいですよ。真っ白な蛍光灯だと木目が沈んでしまう。家具にとってはあんまりいい明かりじゃないんです。日本だと「薄暗い」ってネガティブなイメージですけど、暗いからいい。暗さを楽しむのがいいんです。

4s
女性に人気のエンジェルたちも至る所でお出迎え。

5sアイテム数が多いのに居心地がよいのは、鈴木さんの語る「いろいろな要素を入れる」という考えに通ずる。店内にはアンティークの小物も数多い。お昼なのに少し薄暗い店内。鈴木さんの「明かり」へのこだわりが店内にも表れている。

 

鈴木さんがアメリカで感じたさまざまな文化のなかでも、もっとも影響を受けたのが「教会」のインテリアだそうです。なぜ鈴木さんは教会に「インテリアの神髄」を感じたのか。そしてその神髄を、家庭でどのように活かすのかを伺いました。

教会が素晴らしいのは、五感が総動員されるということなんです。教会に行くと、まず目で楽しむステンドグラスがあるでしょう。そして高いところにランプがあって、目の高さにはキャンドルが並んでいますね。ゴスペルや賛美歌が流れて耳でも楽しめて、そこで食事を頂いて口と鼻でも楽しむ。この五感が動かされるところに、インテリアの神髄を感じましたね。

それともう1つ。「いろいろな要素を入れる」ということなんです。色々な要素があるとごちゃっとするんじゃないかと思うけれど、実はいろいろな要素があったほうが人間の心は心地よさを感じるんです。木材だけとかではなく、そこに金属を入れたり、植物を入れたり、陶器の物を入れたり。いろいろな素材を入れていく。これも教会で学びました。

家庭でも応用できますよ。一番簡単なのは、家具屋さんに相談してみること。家づくりと同じで、家具やインテリアを購入する時は、その人の好みの映画とか、どんな音楽が好きかとか、そんなことを1つひとつカウンセリングしながら決めていくんです。すると失敗が少ない。家具屋さんによって得意なものがあって、ぼくは英国、英国クラシックが専門ですが、ぜひ相談してみて下さい。

自分でやってみる方法は、まずは「1点豪華」ですね。新しい家が完成すると、なかなか希望の家具まで揃えられないことが多いけど、1点だけでいいから思い切ってお気に入りのものを買ってください。すると、その家具をよりよく見せたくなって、そこに飾る雑貨や、その隣に置く棚などが欲しくなる。家族と一緒にインテリアも成長していくんです。

ゆっくりでいいと思います。最初からお金を何十万とかけられませんから。旅行に行ったときに買った置物とか、何かの記念日に買ったものとか、そういうものが増えていくことで、インテリアも成長していくんですね。愛着があるものだから、直して使います。そしてその直しながら使ってきたものの「味わい」こそが、家具の楽しさなんです。今は安くて手軽な家具があるから平気で家具を捨てる文化になってしまったけど、それを味わわずして捨てちゃうなんて、あまりに勿体ないですよ。

うちの子供たちなんて「お父さんこの椅子東京に持っていくねー」とか「このテーブルは将来はわたしがもらっていく」なんて言って持っていっちゃいました。でも、そうやって引き継がれていくところがいいんです。そうやって家具は家族になっていく。家族ですから、そう簡単に捨てるってわけにはいかないでしょう。一緒に育っていく、そういうつもりで、じっくりと家具を選んでみたらいいんじゃないかと思います。まずは1つの壁から、1つの棚から、初めてみてはどうですか? 

さすがは30年の経験をお持ちの鈴木さん。家具の知識や情報には、ただただ圧倒されるばかりでした。そして鈴木さんの語るインテリアとの付き合い方には、私たちが考える「家づくり」とも共通するものがありました。なかなか記事だけでは実感がわかないかもしれませんが、暗さの美学、そして多要素を取り入れること。お店に行くとヒントが得られるかもしれません。

 

○店舗情報○

木楽館
住所:〒970-8026 福島県いわき市平字材木町45
電話:0246-21-1001

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