家ナビ編集部の会社訪問その8

(株)小森工務店 小森測さん

どこか昔懐かしい日本の家らしさを残しつつ、高い性能とデザイン性を維持し、自然と共存する家を生み出している小森工務店。設計するのは、自ら設計と施工、左官や家具制作まで一括して関わる「アーキテクトビルダー」の小森測さん。デザイン、機能性、自然素材のハイレベルな融合を目指す若手の旗手に、自らの家づくりの理念について伺いました。



「昔の棟梁のように」

ー小森さんは、設計だけでなく現場の施工や左官までこなしてしまう「アーキテクトビルダー」でもあります。なにかこだわりがあってのことなのでしょうか。

もともとものづくりが好きだったんです。なにか自分で作りたいなって、小さい時からずっと考えていました。小森工務店は僕で三代目で、祖父が立ち上げて今年で80年になります。小さいころから祖父や父の仕事を間近で見ていたし、職人さんもよく出入りしていたので、「つくる」ということは僕にとって日常的で普通のことでした。

アーキテクトビルダーといっても、要するに昔の棟梁と一緒です。意匠やデザインも考えながら、実際に手を動かして家を作る。そういう姿に憧れたということかもしれません。実は、もともと宮大工になりたかったんですよ。高3の時に、小川三夫さんという寺社建築専門の会社の社長さんに弟子入りの手紙を出したこともあります。法隆寺の宮大工だった西岡常一さんという方がいるんですが、その方が生涯で唯一弟子に取ったのが小川さんだったんです。結局、断られましたけど(笑)。

やっぱり自分自身「つくる」ということが好きなんだと思います。それから、木や土や、自然のものに触れていたいということもあるかもしれませんね。家のことって図面だけはやっぱり分かりませんし、できるだけ現場の状況、例えば風通しとか日当りとか、周囲の環境とか、そういうものにできるだけ触れられる環境で家づくりをしたいという思いがあるんです。

なぜかというと、できるだけ設備に頼らずに家を作りたいからです。ある程度予算を出せば、設備を入れるのは難しいことではありません。大型の太陽光発電を入れれば、性能の高いゼロエネ住宅を作ることもできます。けれど、設備に頼る前に、その土地の性格や見える景色、光や風の動き、そういう土地の特性を最大限に生かさないといけないと思っています。それを考慮した上で、設備は必要最低限で抑える。それが建築だとぼくは思っています。

自ら現場で手を動かすことにこだわる小森測氏。

 

「縄文的なものに憧れます」

―小森さんの住宅は、木材や漆喰、土壁など、自然素材が多く使われているのが特徴ですね。自然素材の魅力とは、どんなところにあると感じてらっしゃいますか?

自然素材を使う理由は、健康面への配慮や心地よさももちろんありますが、まず第一には経年変化の美しさがあります。時間が経った時にきれいなのは、やはり自然素材。時間をかけてその人の家になるというところがいいと思います。もちろん傷や汚れもつきますが、長く使われた家で経年変化した床や柱を見ると「汚い」とは思わないですよね。良く触れるところは色が飴色に変わってきたり。そういうところに愛着が湧く家にしたいと思っているんです。

大学で建築を学んでいた頃、大きな影響を受けた建築家の1人に藤森照信という建築家がいます。代表的なのが「タンポポ・ハウス」という、東京の国分寺にある家です。藤森さんの家は自然素材を使っていて、屋根にも草が生えていて、デザインがちょっと土着的で。僕自身、土着的な物が好きなんですよ。時代でいうと弥生より縄文みたいな。洗練されているものより、荒削りで、手の力が感じられるような、身体が無意識に心地よいと感じるようなものが好きなんです。

木材や漆喰や土壁などもそうですが、日本で昔から使われていた素材は、湿度や室温を調整する機能が備わっています。機械設備をつけて自然に逆らうのではなくて、自然の力を利用したり、うまく調和することを目指す。そのあたりのことは、昔の家に学ばされることが多いですね。
だから、自分が設計する家も、本当は土壁を入れたくて、施主さんに提案するんです。「ああちょっと土壁は…」って断られることもままありますが(笑)


藁入砂漆喰の材料。漆喰に風合いを持たせるために藁、砂、ベンガラ(赤)、松煙(黒)、酸化黄(黄)を。

 

「デザインに手の痕跡を残す」

―土着というと、何となく野暮ったく感じたり、原始的なものを取り入れた暮らしをイメージしがちですが、小森さんの家は、デザインも洗練されています。

人の手の痕跡を残すデザインを心がけています。工業製品や既製品だけで作るわけではないので、人の手が加わったものは、人の手が加わったことを残したいですし、そのような痕跡があるからこそ安心感や居心地の良さを感じるということもあると思うんです。木組みや軸組みを見せたり、職人の手作業でなければ難しい曲線を出したり。そこに人の手仕事が感じられるものを残したいですね。
初めから無駄を落としたものではなく、自然素材の風合いと職人の技術を、できるだけシンプルにデザインに落とし込むという感じでしょうか。

素材、自然、デザイン、職人技が有機的に繋がっている。曲線も特徴のひとつ。(中塩の家

 

「ミニマムに循環する土着な家」

―小森さんにとって理想の家とは、どのような家ですか?

好きなスローガンにthink global, act localというのがあって。これは大きな視点で地元のことを考えて動くってことなんですが、家づくりも、人や素材が地元で回るというのが一番の理想だと思うんです。わざわざ外国から取り寄せるんじゃなく、近くでとれた木と土で、地元の職人さんで作るからこそ、それがまた山に返って循環していくという。そういう視点を大事にしたいと思っています。

実は、今作りたい家があるんですよ。家の外に菜園があって、朝起きて、外の菜園で野菜を獲って来て、そのまま土間にある台所で朝ごはんを作って、家のなかで火をおこして暖がとれる、みたいな。衣食住が自然環境とゆるやかに繫がって巡っていくような住宅ですね。昔は当たり前のことだったんですけどね。

ちょっと抽象的かもしれませんが、生きることが、住まいや周囲の環境と連続している暮らしが理想です。使われる素材も地元の自然素材が使われていて、まさに土着的というか、その地域に根付いた暮らし。そういう家を設計して、お施主さんとあれこれコミュニケーションしながら施工していければいいですね。
最近「土壁」で検索して僕のところに来てくれた若いお客様がいて、嬉しかったです(笑)。
会社の作業場にて。土壁や漆喰の調合は必ず自分で行う。


「現代の技術と昔ながらの知恵と」

ー小森さんは土着的なものに惹かれつつ、性能面でもかなり現代的です。自然的要素と機能性との両立というものについては、どのような考えをお持ちですか?

昔の家は、現代の住宅に比べて機能が劣るかと言えばそうではありません。例えば、昔の家には排気塔がついていました。きちんと煙が抜けるということだけでなく、空気の流れを作るという意味でも理に適っています。庇の出し方なども、昔の家は長めに出しますよね。夏場の強い日差しを遮り、室内の温度が上がるのを防ぎます。そういった日本の風土で培われてきた知恵や技術は積極的に利用します。

しかし昔ながらの家がいいとは言っても、すきま風が吹いているような家では日々快適に過ごせませんよね。住み心地がよくなければ、そこに長く暮らしたいとは思わないし、愛着も湧きづらいでしょう。自然的なことと技術をいかに融合させていくかという事はぼくの家づくりのテーマでもありますので、断熱性、耐震性、耐久性などは高いレベルで実現できていると思います。全棟で長期優良住宅の認定を取得していますし、構造計算も社内で行いますよ。

ですが繰り返しになりますが、ぼくは、設備や機械に頼る前に、出来るかぎり、設計のアイデアによって居住性を高めていきたいと思っています。その土地の特性を読み解き、昔の家の知恵と自然のものを用いながら設計することで、設備は必要最低限に抑えられると思います。

そしてそのうえで、デザイン・コスト・性能という3つの要素のなかで、お客様が何を大事にしているのかを線引きしていく。性能を上げればコストが上がるし、デザインを重視すれば、これも手間がかかってコストが上がってしまいます。なにを重要視するのか、じっくりとお施主さんと考えていくことを大事にしています。基本的に「出来ません」とは言わないようにしています。

とはいえ設計だけしてるとなんかモヤモヤしてくるんですよ。なにか道具を握って目の前の仕事をしてると、やっぱり自分はものを作るのが好きなんだって再確認できるんです。それが自然素材だとインスピレーションも湧いてきますしね。そんな感じで設計と施工の間を行ったり来たりしながら常に試行錯誤しているのが自分にはベストなんだと思います。


風向、日射、視線の方向、借景などあらゆる状況を客観的かつ肌で感じながら設計・施工。(若葉台の家

 


会社名:有限会社 小森工務店
所在地:〒970-8003 いわき市平下平窪字諸荷前25-3
代表取締役:小森良一
TEL:0246-22-4733
E-mail:
主な事業内容:住宅の設計および施工
事務所・店舗・商業施設等の設計及び施工
その他、増改築・リフォーム・建物補修等


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