家づくりを始めるときに、最近は必ずといってよいほど、太陽光発電の話題が取り上げられます。太陽光発電システムを入れることで「電気代も含め得するかどうか」ということを知りたいということになります。震災以降特に、ソーラーをのせた方が儲かるイメージが広がっています。しかし、売電価格が下がったり、電気代が高くなったりと条件は変化しています。

もう一方の考え方として、震災以降、「電気を自宅の分は自宅で発電したい」「停電の場合でも発電分は利用できる災害対策」という住まいの可能性を高めるような考え方も広がってきています。

今回のコラムでは、「太陽光発電は入れたほうが良いの?」という問い合わせに、ざっくりとですが、お答えしていきたいと思います。

結論的には、乗せられる屋根の大きさや屋根面の向き等の要因も影響し、個別条件をもとにシミュレーションしなければなりませんが、リスクなども考慮すると「基本的には大きく得するものでもなく、大きく損するものでもない」ということになります。どのあたりで、得、よかったかというのは、環境配慮的な価値観も影響しますし、ある種、家電的でもあり住み心地にあまり影響もしないので、住まい手さんの好みで乗せてくださいという感じです。

それでは、太陽光発電に関するコストなどを検証していきたいと思います。

 


 

1.太陽光発電コストざっくりシミュレーション

こちらの試算リストは、A~Lまでの四角の中に、条件ごとの金額や数値など書き込んでいくと試算できるようになっています。自分で記入し計算できる方が実感しやすいと思い作成しました。金額などの数字が入っていないと分かりにくいので、ざっくりとですが統計を元に各種想定値をオレンジ色文字で記入しています、あくまでも参考の数値として考えて下さい。それでは、内容を説明していきます。

◎設置基本条件
・所在地は、福島県いわき市内。
・約30坪木造2階建て切妻瓦屋根(4寸勾配)の南側にパネルを設置する。
・建物は南向き、太陽を遮るような近隣建物等はない。
・設置パネル4.80kw。発電シミュレーション結果年間5600kwh。

A:設置費用
普及価格帯として312,500円/kwで計算。

B:ローンによる利息
参考サイト:https://www.hownes.com/loan/sim/repayment.asp
・太陽光発電設置費1,500,000円。
・固定金利1.08%
・35年返済(新築の場合を想定しています)

C:設置総コスト
設置費用とローン利息をあわせた金額です。設置見積だけではなくローン利息も含めて検討します。

D:年間発電量
太陽光発電シミュレーションサイトなどで発電量を確認できます。

E:世帯年間電気利用量
家庭の年間の電気料金から換算した電気量を記入します。

F:世帯年間電気利用料金
設置前に家庭で年間支払う電気料金です。今回は、月1万円×12カ月と想定して記入しています。

G:電気料金単価
東北電力HPより、およそ25円としています。

H:世帯年間売電可能量
太陽光発電量から世帯年間電気利用量を引いて残った電気量になります。

I:売電料金単価
平成29年度の10kwh以下のパネル設置の場合の売電価格をおよそ30円としています。

J:売電料金
世帯年間売電可能量に売電料金単価をかけた金額です。

K:世帯年間消費・売電合計金額
住まいで年間に利用した電気代と売電で得られた金額の合計金額です。太陽光発電が年間で生み出した電気代金です。

L:減価償却期間
設置に関する出費に対し、太陽光がつくる電気代(K)何年分になるかという期間です。この期間以上に、太陽光を利用して電気を生み出していければ利益的です。

・・・・・・A~Lまでの設置購入から減価償却までの金額や数値などを見通していただけたでしょうか。メーカーや工務店の見積、電気料金、自家消費傾向などを反映して、ざっくりとご試算してみてください。

▶今回のシュミレーションでは減価償却期間12.5年となりました。

 


 

2.太陽光発電に関するリスクとリターン

太陽光発電は、だいたい15年保証等が一般的になってきていることを考えると、本体へ影響するような災害等がなくそのまま屋根などにのせてパネル想定寿命の20年ぐらい経過できれば、お得な投資であり、リターンがあるなと想定できます。

投資にはリターンもあればリスクもあります。そのあたりをどう考えるかによって投資の仕方は異なってくると思います。リスクに対する先の漠然とした不安で躊躇するか、現時点で想定できるリスクやリターンを理解して決める方がすっきりすると思います。ここでは、現時点で想定される太陽光発電に関するリスクや変動要素などをまとめてみます。

①先の経費は想定でしかない。
これから想定する設置後にプラスでかかる可能性がある経費等は、おそらく10~15年以上先のことなので、部材や設置費等の価格が今より安くなっているか高くなっているか想定できない部分があることはご了承ください。あくまでも、現時点での想定金額になります。

②メーカー保証と故障の可能性部位
メーカーが関連する部材の保証期間を15年とするところが増えています。関連部材で故障が想定されるのが、モニタリングユニットやパワーコンディショナーになります、それぞれ交換すると5万円~10万円程度と想定されます。保証期間内に故障し取り替えられればラッキー(?)ですが、保証期間後に故障交換ではその分がかかります。


QセルズHPより


③売電料金と電気料金の変動
売電料金は、震災後より年々値下がりしています。10年固定買取後の単価はだいぶ下がることが考えられます。一方で電気料金は値上がり傾向になります。この変動も想定できませんが、売電料金は下がり、電気料金は値上がりしていくことは変わらないだろうなと考えられます。

④蓄電池の可能性
売電料金が10年固定買取後以降、おそらく11円になると言われています。そうなると、今まで売電していた分を効率的に自家消費していくことが望まれます。自家消費するためには、蓄電池の設置が必要になってきます。今のところ蓄電池設置に80万円ほどという見積もあります。
10年後はもっと安くなっている可能性もあるので、売電価格が下がった段階で蓄電池の設置を考えることも可能です。
蓄電池の種類には、100Vと200Vタイプがあり、100Vタイプを設置するのがコスト的にも一般的です。100Vの蓄電池での注意点は、利用できる範囲です。エアコンやIH、エコキュートなどは、200Vの電源が必要なため利用できません。しかし、最近では、商品によりエアコン、IH、エコキュートも利用できるものも出てきているので、商品選定時にご確認ください。

⑤家庭の電気利用量の変動
家庭の電気利用量は、20年間もあれば子供たちが巣立つ、年老いた親との同居など家族構成が変わることで電気の利用量が変化する可能性もあります。また、家電等の省エネ性能が高まり、消費電力量が減る可能性もあります。

⑥発電力低下
20年後のパネル発電量は、ものにもよりますが設置時より1~2割下がると想定されています。あと、パネル自体というより、気候変動で曇りがちな年になってしまうと発電量は低下します。

⑦解体撤去補修費
20年後に、パネル自体も故障し取り替えるか取り外すとなると、撤去処分費や設置場所の補修が必要な場合は、補修費などもかかります。パネルサイズにもよりますが20~30万円ほど検討しておく必要があるかもしれません。
しかし、新築住宅でも20~30年たてば何らかの補修工事が必要になってくると思います。その一環の屋根補修として、今から家全体の修繕工事積立金として見込んでおくということも必要と考えられます。

⑧リスク・変動要素まとめ
リスクや変動要素を想定列挙してみましたが、モノの故障関連は、メーカー保証期間中であればあまり心配なく保証期間内に減価償却できそうです。電気料金や売電料金が変動しても、生活していれば電気は使うので、電気利用料金を考えればそれだけでも長い目でみれば元は取れそうなので、売電主体の場合でなければ、売電料金はプラスアルファと考えるのはどうでしょうか。また、パネル撤去のコストはかかりそうですが、そこは、住まいの維持管理費として別途計上しておくと考えるといかがでしょうか。

 


 

3.まとめ

今回のざっくり試算で、リスクも想定されますが、15~20年の間には、設置代金を上回る様々なリターンがありそうだと考えられます。普通預金よりはよい金利となるかもしれません。だからといって、屋根の上の太陽光発電だけで大きな利益がでるというよりは、少しお得かなという感じがします。

住まいをつくるときに、最初の段階で間取りや素材、断熱性能や維持管理しやすいつくり方というのは、しっかりと確保していきたい部分なので必要です。しかし、太陽光発電設置に関しては、例えばメーカーのキッチンを選ぶ際にどのグレードのキッチンを選ぶかに似ています。住まい手さんの好みやこだわり次第という感じがします。

電気に対して初期投資をするかどうか。電気代や売電料金、償却期間等を考えるのが好きか嫌いか。普通預金利息より太陽光発電による投資が得と考えられるか。しっかり節電生活して、売電価格率を高めることにトライするか。いろいろなパターンが想定されます。

住まいづくりは決めることがたくさんあります。また決めることが増えてしまいましたが、今回のざっくり試算リストなどを利用し、太陽光発電設置も決めていただきたいと思います。

いわき家ナビの正木屋材木店では、太陽光発電も取り扱っていますので、ぜひご相談くださいとのことです。

以下は、空欄の太陽光発電コストざっくり試算リストになりますので、ご自身で記入・ご検討してみてください。

環デザイン舎 北瀬幹哉

※単価参考資料
・総務省統計局、家計調査報告 平成29年7月
・日本生活協同組合連合会「わが家の電気・ガス料金しらべ」報告書 2016年7月
・住宅保証機構 住宅ローンシュミレーションサイト
http://www.howners.com/loan/sim/repayment.asp