みなさま、ごきげんよう。

好きな寿司ネタは雲丹とイカオクラ、好きな建築家は丹下健三とルイス・バラガン、病み上がりのヤナグルコです。肺炎球菌にやられて菌血症になり、回復に1か月を要しました。連載を始めた矢先に2か月近く更新が滞ってしまい本当に申し訳ありませんでした。

秋から冬への季節の変わり目、みなさまもどうぞご自愛くださいませ。

さて、今回のヤナグルコがゆく! は黒川紀章設計の国立新美術館へ、開館10周年記念の展覧会「安藤忠雄展-挑戦-」を見に行ってまいりました。


お天気のよい土曜日ということもあってか大大大盛況!でもそれも至極当然と申しますか、安藤さんのこれまでの人生、作品、人柄に触れれば彼に惹かれないという人はいないんじゃないかなと思うのです。元プロボクサー(リングネーム:グレート安藤)であり、引退後に独学で建築士となり、たくさんの賞を受け、名だたる大学で教授となり、ガンで臓器を5つ摘出しても今なお青春だとおっしゃる。

私が特に惹かれるのは安藤さんのその外見、ルックス、佇まいです。スタイルともいいましょうか。やはり信念のあるひとは顔つきが違います。持っている熱量がその面構えに現れるのでしょうか。元プロボクサーだと初めて何かで読んだとき、「やっぱり」と納得した覚えがあります。特に若かりし日の安藤さんは「あしたのジョー」の力石徹と同じ眼をしていて、見るからに危険な匂いしかしない、きっとアバンギャルドなひとに違いない…子供ながらにそう思ったのでした。


そんな『稀代の建築家、安藤忠雄。その半世紀に及ぶ挑戦の軌跡と未来への展望に迫る』 この展覧会は、安藤さんご本人の言葉を借りれば『業績の棚卸』で、これまでとこれからの仕事を

Section 1
原点/住まい

Section 2

Section 3
余白の空間

Section 4
場所を読む

Section 5
あるものを生かしてないものをつくる

Section 6
育てる

の6つに分けて、解説・模型・図面・写真・映像そして時にインスタレーションを用いて展示されています。

事前にSNSでこの展覧会の情報を得て、すごぶる評判が良かった安藤さんご本人による音声ガイドを借りてみました。ハスキーな大阪弁で話される内容はピン芸人のよう…これがあればぼっちも寂しくありません。そして何度も好きなだけ繰り返して聴けるので、私のような安藤さんのことを浅くしか知らないファンでも4時間も聴き続ければ、ちょっとしたプレゼン(安藤忠雄あるある)ができるくらいになれます。ただ時々面白すぎて、思いっきり吹き出してしまったところがあって、ぼっちには恥ずかしかったです。


私が一番好きなセクションは「原点/住まい」で、特に一番最初の作品だという『住吉の長屋』が大好きです。

コンクリート打ち放しの潔い外観や、内に開かれた設計、そして何よりもとにかくかっこいいと感じます。居間の隣に中庭があって、中庭を通らないとそれぞれの部屋に行けなくて、でも予算がないので中庭には屋根がなくて…
やっぱり私は、やれ動線がどうの、気密性がどうした、掃除はどうやれば…なんてことはホント二の次でいいや、と改めて思いました。居心地の良さというのは人それぞれ感じるところが違うわけで、使いづらくても、寒くても、掃除が大変でも、自分の好きだと感じる空間で生活が出来る気持ち良さにはかなわない、と思うのです。

その証拠にこの住吉の長屋は40年を経て今も変わらずご家族で暮らされているとのこと。時々「売ってくれ」と頼んでいるけど全然売ってくれないんで気に入っているのだと思う、と。(笑)
編集長と私の出会いのきっかけになった旧いわき家ナビの取材記事の中で、編集長が我が家のことを「住みやすさよりも居心地のよさ」と書いてくださってとても嬉しかったことをふと思い出しました。

余談ですが、TV番組「建物探訪」の渡辺篤史さんは自邸を安藤さんにお願いしたのだとか。「安藤さんのコンクリート打ち放しに憧れてね、でも住んでみると夏は暑いし冬は寒い。確かに住みづらい。それでもその空間に居られることが幸せでね。それだけでいいや、と。」私にはその気持ちが痛いほどわかります。(うちはローコストの木造ですが。)


この展覧会の目玉は?と問われれば、安藤さんの代表作のひとつである「光の教会」の1/1の、原寸大のインスタレーションと即答します。(が、規模が大き過ぎて法律上インスタレーション=展示物ではなく、増築扱いだそうです。)

建築物は実際に中に入って体験してもらうことが大事だとの考えから、なんと自腹で再現されたそうで、その額7000万円!実際の茨木春日丘教会の建築予算は3500万円ほどだそうです。

実際の方で安藤さんは当初、屋根だけでなく、十字の部分にもガラスを入れず、直接光が差し込んむようにしたいと提案したそうですが、当然の反対に合い、ガラスを入れ、冷暖房も完備された礼拝堂が完成しました。

今回の再現では、その当初の設計どおり十字の部分にガラスを入れず、風や光が直接入るようになっていました。本当はこうしたかった、いつか本物のほうもガラスをとってやろうと目論んでいると笑って話されていましたが、きっと本気だろうなと思いました。


他にも頭大仏や「直島のプロジェクト」の全貌がわかるインスタレーション、現在進行形で進んでいるパリの旧・商品取引所のリノベーション計画などすべてが見どころに違いなく、これでもか!な安藤忠雄がてんこ盛り、一度では絶対消化できない展示の量なので、可能ならば何度でも足を運びたいところです。

希望があれば生きられる、老眼にならない by 安藤忠雄

安藤さんは老眼にもならないようですが、図面にしろ模型にしろ繊細の極みで、老眼の私にはなかなか見えていないモノも多かったのではないかと思いました。妙齢のかたには老眼鏡や拡大ルーペを持参されることをおすすめします。


国立新美術館は建物自体も設えも素晴らしく楽しいところです。特に3階のポールボキューズでのランチは外せません。たとえぼっちでも。この日は見学前に腹ごしらえをしましたよ。

まわりのテーブル席は楽しそうなご婦人方のグループが多くて、なんだか羨ましくなりました。私も40年後、小綺麗に品良く着飾って、気の合うお仲間たちと美術館でランチが出来るような年寄りになっていたいものです。

最後に一番心に残った言葉を…
「あるものを生かしないものをつくる。うまくいかずとも諦めずに走り続けていると、ときに思いもよらぬかたちで夢はかなうものです。」


国立新美術館開館10周年
安藤忠雄展―挑戦―
期間:2017年9月27日(水)~12月18日(月)毎週火曜日休館
時間:10:00~18:00 金曜日・土曜日は20:00まで
場所:国立新美術館