山並みが広がるのどかな田園地帯にひときわ目を惹く建物。我を張るようにあるのではなく、その建物は外観も設計思想も「自然と共生」しながらあるようです。いわき市平中塩。人も光も風も季節もぐるぐると廻り、巡る家が完成しました。
南面に開けた大きな窓からは太陽の光を取り入れ、風を北側の小さな窓へ流し、夏は深い軒で日差しを制御しつつ川の涼風を上手に取り込む。また、吹き抜けと高窓を利用した重力換気など極力自然を利用する設計。自然との共生をカタチにした、新しい時代の自然派住宅です。
設計は小森工務店。設計から施工、左官までこなすオールラウンダー。現代風に言うと「アーキテクトビルダー」ですが、「いわゆる昔の棟梁ですね(笑)」と小森さん。出し桁、渡り顎工法など伝統的な日本の木造組み手で仕上げています。
自然素材が好きな建主様とそれを得意とする工務店との出会いは奇跡でした。壁はワラ入り砂漆喰で、部屋により仕上げを変え表情を作り、無垢の木も杉、桧、カラマツ、桂、さわら、ケヤキ、タモ、サクラなど適材適所に配し、漆喰、木材で仕上げることで調湿効果も高めています。また軒を大きく設けたことで外部木部がなるべく雨に当たらないようにしています。
自然素材と昔からの知恵を大切に、出来るだけ設備に頼らず光と風を効率よく取り込みながら快適に過ごせるように、との思いを設計から施工まで貫いています。間取りも回遊したり上下したり工夫が一杯で、人も光も風も季節もぐるぐる廻るお住まいです。
暖房は基礎に温水を流しコンクリートに蓄熱した輻射熱を利用しています。階段を中心に回遊動線。
玄関。型波ガラスの後はダイニング。気配を感じられます(写真左)。二世帯住宅で、祖父母用の二間続きの和室(写真右)。
リビングの壁は一部土壁仕上げ(写真左)。台所後のキッチン庫。その後に小川が流れる(写真右)。
木で造作した水周り。左より脱衣所(床:桧)、洗面所、トイレ(床:カラマツ)。
2階の階段周り。ロフト部分は子供部屋より続いています(写真左)。 ロフト付の2階子供部屋(写真右)。
子供部屋のロフトは子供部屋同士つながります。開閉する高窓で採光と換気を促します(写真左)。勉強部屋&書斎。小さな隠れ部屋も(写真右)。
子供部屋のロフトから階段側を見下ろしたところ。2階の壁はアール形状を取り入れ左官とともにあたたかな雰囲気。
日差しをコントロールする2階バルコニーの深い軒。大工になりたかった小森さん。
カラマツの木部とガルバリウム、そして周囲の緑が調和のある景観を作り出しています。