【創心すまい】すべてはお客様のために

ー家ナビ編集部の会社訪問その9ー

(株)創心すまい 青木 勝利さん

 

今回お邪魔したのは小名浜大原に事務所を構える創心すまいさん。ローコスト住宅から大規模な三世代住宅まで手広く手がけるオールラウンドなハウスビルダーです。社長の青木勝利さんに、家づくりのこだわりやデザイン思想について聞くと、その思想は徹底して「合理的」。しかし、なぜ合理的でなければいけないかを伺うと、そこにはあくなき「顧客満足」の追求がありました。

 


「お客様の代理人」
—今日は取材を引き受けて頂きありがとうございました。まずは会社の紹介や、家づくりに対するこだわりなどについてお話を聞かせて下さい。

創心すまいは平成6年に立ち上げられた会社です。ぼくが社長についてからは10年くらいになりますね。普段の仕事は、パソコンの前に何時間も座って設計の仕事をすることもあれば、隣にある作業場で木材をカットして造作材を作ったりすることもあるし、もちろん現場に行って管理の仕事をすることもあるので、もう本当に「なんでも屋」という感じですね。「家づくりのこだわり」って改めて聞かれると、なんだろうね(笑)。にかくお客さんの満足度を高める家を作りたいと思ってるんです。だから敢えて言うならば、「お客様の夢を最大限カタチにすること」だと言えるかもしれませんね。

お客様は家づくりのプロというわけじゃないから、漠然としたイメージを思い浮かべるので精一杯のはずです。だからその漠然としたもの図面に起こしてカタチにする。それが仕事だと思っています。いや、設計するというより、お客様の代わりに図面を描いて家をつくる代理人というか、お客様の気持ちを代弁する弁護士というか、そんなつもりで家づくりに関わっています。

木の家が好きだから、と弊社に依頼してくれるお客様が多いのですが、創心すまいはもともと材木関連の会社だったんです。ですので木にはこだわっていますよ。木は日本人に馴染みが深く、小さい頃から触れている素材だからなんか落ち着きますよね。高価な材がいいわけではなく、できるだけ木や自然素材に囲まれていたいというお客様のために、適材適所で活用しています。

とはいえ木は自然のもの、生ものなので環境に左右される素材です。適材適所で使うためには大工の技と経験が必要不可欠になってきます。大工さんの技術はほんと素晴らしいですよ。常に尊敬の気持ちを持って、大工さんや現場の職人さんたちが気持ちよく仕事ができるよう心がけています。そうすると作る家に愛情が生まれ、いいものが出来て、お客様に喜ばれる。作るのも住むのも人ですからね。その分材料納入業者には厳しいです(笑)。そこもこだわっているところかもしれませんね。

事務所の隣りにある大きな作業場。ここで自ら木材の加工も行う。


「お客様のための合理性」

—過去にも、いわき家ナビで紹介させて頂きましたが、青木さんが関わったローコスト住宅はとても印象的でした。震災後の資材価格の高騰などで、ローコスト住宅の実現はハードルが上がっているようにも見えますが、やはりニーズは高まっているんですね。

そうですね。今の若いお客様は、高い家を作ろうと考えている人は少なくなっていますよね。大きな家を作って必死になってローンを返済するんじゃなくて、自分たちの趣味や旅行にもお金を使いたいと思ってる。家は最低限の機能があればいいと思っているわけです。だって、今若い人たちが何か買おうと思ったらメルカリとかヤフオクを利用する人が増えていますよね。そういう世代の家づくりのニーズというのは、自然と「お金をかけたくない」っていうことになっていくんじゃないでしょうか。

ただ、これは別に「安い家を作る」ということではなく、「無駄なところにお金を使わない」ということを意識しています。ローコストの住宅だといっても、それで住みにくくなったのでは意味がないので、うちの住宅はすべての棟で「長期優良住宅」の認定を受けていて、耐震性も断熱性も国の基準をクリアしています。そのうえで本体価格で2000万円を切るような住宅に落とし込んでいく。そのためには、いろいろなものを合理的に考えていくことが必要だと思います。それに、シンプルな家にすると、デザインの無駄が落とされて逆にデザインの幅の広い家になるんです。

無駄がなく、デザインもシンプルだと、実際住んでみて使いやすいですし、使いやすいということは長く使えます。自分が住まなくなった後の人も使いやすいということですよね。すると中古物件としての価値もあるということです。それに、後になって間取りを変えることもできる。ということは、リフォームもしやすいんですね。初期費用で莫大なお金をかけずに、時に応じて直したり、リフォームしたりしながら、長い間を住み継いでいく。それは結果的にもローコストになっていくと思いますよ。

無垢材をたっぷり使いつつ、無駄を省いた全体のバランスでローコストも実現。


「お客様との継続的な関係」
—満足度の高い家にしていくには、お施主さまのニーズを丁寧に聞き取ることも必要かと思いますが、お施主さまとのコミュニケーションにおいて、注意していること、意識していることなどはありますか?

お客様のことを知るためには、お客様の家に行ってしまうのが一番かもしれません。家に行くと、その人の暮らしぶりが分かってきます。マンションだって、全部同じ間取りなのに家のなかに入ったら家族の数だけ暮らし方は異なりますよね。それと同じで、家に行くことで、何に困っているのか、どんな暮らしをしているのかが見えてきます。暮らしぶりから、性格や考え方も感じられるようになって、ここがお困りじゃないですか? こんな家にしてみたらどうですか? なんてことでニーズを先回りできるようになる

その人の将来像とかライフスタイル、将来設計も伺っていきます。例えば、子供が3人いるとして、子供部屋を3つ作ろうと言われたとします。でも、3つも子供部屋が必要な時期って、受験勉強なんかが重なる3〜6年程度なんですね。一方、親たちは、その家に30年50年と住むことになります。それだけ長く住むうちの、たった3年とか6年のために子供部屋を作る必要はないと思うんですね。だから、場合によっては、将来のことを考えたら、そこまでお金をかけなくてもいいんじゃないですか、なんて提案したりもします。

かっこよく言うと「スケルトンインフィル」なんて言ったりもしますが、自分が高齢者になったあとでも間取りを変えられるようにしておくといいんですよ。そのためにも、やっぱり既存のお客さんとつながっていく、信頼してもらうということがとても大事だと思うんです。1回きりじゃないですから、お客様との付き合いは。

過去25年約400件の顧客データはすべてファイルとデータで保存し、いつでも対応できるようにしている。


「お客様が喜ぶ顔が見たい」
—なるほど、とても面白いですね。そういうデザイン思考、仕事への取り組み方は、社長のなかでどのように形づくられてきたんですか? ご自身の経歴、ルーツなどについて少しお話を聞かせて下さい。

中学生のときだったかな、たまたま家を作ることになって、父親がハウスメーカーに頼んだんだけど、担当者が方眼紙に書かれた図面を持ってきてくれてね、それで父親が外壁の色はお前が決めろとか、お前の部屋は2階だから図面を自分で描いてみろなんて言われて。それで自分で方眼紙を買ってきて、自分で自分の部屋を考えたんです。それが最高に面白くて。それが原体験ですね、私にとっての。

そのあと、さあ大学進学だ、何を学んだらいいんだってときに、その図面のことが思い起こされて、建築を勉強しようという気持ちになって建築学科に進みました。大学在学中も設計事務所でバイトをしていて、いろいろな物件の図面を描きましたね。あるとき、偶然まちを歩いている時に、自分が図面を描いた家が建っているのを見て、すごくうれしくなりました。自分の関わった物がこうして実際に形になって、まちや風景の一部になっている。その喜びみたいなものを、その時に強く感じました。

ただ、経験を重ねて、会社の経営にも関わるようになってからは、何が一番の喜びかって言われたら、お客様が喜ぶ顔を見たときですね。今はやっぱり責任がありますから。いくら奇抜なデザインの家にしたとしても、お客様に喜んでもらえなければ意味はないし、会社も続けられません。お客様の希望を答えるために何ができるか、どういう家なら喜ばれるかを常に考えるようになりました。

取材時もお客様からの絶大の信頼が感じられた(玉露のホワイトハウス

 

「すべてはお客様のために」
—先ほどお話しされていたローコスト住宅も、家づくりに関する合理的な考え方も、いずれそれはお客様に返ってくるということかもしれませんね。顧客第一だからこその合理性ということでしょうか。

そういうことです。設計や経営を合理化して、コストをおさえていけば、それは最終的にはお客様の利益になって返ってくるということなんです。例えば、うちはほとんど営業はせずに、お客様はほとんど口コミの方なんですが、そうじゃなくて、広告費をかけたり何人も営業マンを雇っていたら、そこに経費がかかって、最終的にはお客様のコストが上がることになります。だから、ぼくの事務所なんてボロボロでもいいし、車だってパタパタだっていいんです。その分、お客様が安く家を手にできるわけですから。

以前は、新しい顧客獲得のために毎年イベントをやっていました。でも大事なのは、うちで家を建ててくれたOBの皆さんとの信頼関係だなと思うようになって、今ではOBさんの感謝祭のような形になっています。子どもたち向けの木工教室を大工さんと開いてみたり、リフォームやメンテナンスの提案をしたり、そんな感じですね。そこで色々なニーズも分かってくるし、また長いお付き合いができるようになります。

これからは、そうだなあ、たぶん、リフォームとメンテナンスと介護が合わさったような感じになっていくのかもしれませんね。家はますます余っていき、新築は減って、そしてお施主さんも一緒に年齢を重ねていくわけですから。「電球替えてくれ」と言われれば替えに行くだろうし、戸棚を修理しろと言われれば直しに行く。そんな「地域の便利屋」になるのもいいなと思っています。でも大変なのは時間がかかることなんだよね。修理は10分で終わっても、そのあとのお茶とおしゃべりに1時間はかかっちゃうから(笑)。
一見寡黙なようで、熱いハートの青木社長。

文・写真:小松理虔(ヘキレキ舎


会社名:株式会社 創心すまい
所在地:〒971-8111 いわき市小名浜島大原字東田26
代表取締役:青木勝利
TEL:0246-52-1800
E-mail:info@s-sumai.co.jp
主な事業内容:住宅の設計および施工
事務所・店舗・商業施設等の設計及び施工
その他、増改築・リフォーム・建物補修等


 

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