ー水害対策住宅ー
2019年10月の台風による床上浸水した住宅の改築です。
水害により床上30cm程度の浸水被害を受けました。お施主さんは高齢なこともあり、今後台風が来ても安心な住まいに建て替えたいというご要望です。
土地、水害対策、予算、高齢化対応というニーズに応えるため約20案のプランニングを行いました。最終的には住み慣れた今までの土地に高床の平屋住宅となりました。
今後の台風による水害対策としては、1mの高基礎にすること(※2019年の水害浸水時より高い床高)、もしもの時に避難できる小屋裏を利用できるようにすることなどが方針としてまとまりました。
各種水害対策や工事の様子は、ブログで紹介しています。
水害対策の考え方や選定建材等についてはこちらもご覧下さい。【水害対策住宅で試みる3つの計画】
無事引き渡しも終わりましたので、これから少しでも安心してお住まい頂けたらと思います。
(環デザイン舎 北瀬幹哉)
1.高基礎で備える
床上30cmまで浸水したので、約1mの高基礎で設計。建物はシンプルに、備えは充分に。慣れ親しんだ土地で暮らしたいというご要望に応えました。
2.空気が爽やかな室内
明かり取りガラスのある玄関。室内はモイスの白壁とパイン無垢床材、Jパネル(杉)の建具、と調湿効果の高い素材で爽やかに。
LDK
普段はそれぞれの個室で過ごすことが多いので各居室を広めに、LDKはコンパクトにプランニング。幅は2730mm。
主寝室
主寝室はリビングから一続きになります。
ご夫婦が普段いることの多い約12畳+WIC3畳の主寝室には約4.4mの大きな作業台と、電源を3箇所設けました。
子供部屋
各居室のドアを開けると東西へ風が通り抜けます。風通しの良さもご要望の一つでした。
こちらも約8畳+WICとゆとりがある子供部屋。
水回り
玄関側(トイレ上部)に明り取りのガラスを設置しているので、2面採光となり明るいトイレ兼洗面所。将来の介護も踏まえた配置。
3.水害から家族を守る3つの工夫
①1mの高基礎とその活用
基礎を1m上げた分、高さのある空間が出来たので食料品などはこちらに保存できるようキッチンの点検口に梯子を設置。
地熱でひんやりしています。中央にある多機能水抜き栓で、水が上がった場合は水抜きが出来ます。
②臨時避難場として小屋裏と梯子
平屋建てなので、水が上がった場合の臨時的な人と家財の避難場として小屋裏を活用できるよう梯子を設置。
切妻屋根の全面が物置として使用できます。
小屋裏に梯子を付けると出入り口が断熱欠損になりやすいので、断熱材を貼った合板を施工。
③再利用しやすい素材を採用
合板やMDFのドアは水に浸かると膨らんで修復不可能になるので。Jパネルという杉の無垢集成材でドアを造作。無垢材は中まで浸水しないので表面をきれいにすればまた使用可能です。同じ理由で床材はパイン無垢材。壁と天井は水に対応しやすい素材として全面にモイスを使用。調湿効果が高いことと壁紙を貼らずにコストも抑えて仕上げられます。断熱材は今回は再利用可能なボード系を採用。