いわき市四倉の静かな住宅街の一角に、KD設計【※現:(株)佐藤大建築事務所】がまたまた個性的な家をつくりました。家の主役は、建主さまが家をつくる前に買ってしまったという、こだわりの「薪ストーブ」と、「へ」の字の形をした家の構造。建主さまの夢と、設計士のアイデアががっちりとハマった個性的な家が完成しました。
今回の敷地は通りに面した細長い路地から入る典型的な旗竿地。その細い路地を入ると見えてくるのが、黒い外壁が印象的なお宅。長方形かと思いきや、よく見るとなんと「ヘ」の字。への字の形になった理由は、奥まった敷地で建物の雰囲気が感じられにくいので、外観を引き立たせるためとのこと。角度がついているのでリビングも丸見えにならず、プライバシーを守る効果もあります。
玄関を入ると、防水を施したコンクリートの大きめの土間。バイク置き場や工作、来客対応など多目的に使える空間です。そして木をふんだんに使ったリビングがお目見え。床には地元の杉で作られた正木屋材木店の「あつ密すぎ」の15mmを使っています。「あつ密すぎ」は杉の表面に高温高圧のローラーを施しているため傷がつきにくく、デザインの和洋を選びません。ご主人自ら蜜蝋ワックスを塗り、新しい暮らしに備えてきたそうです。
そしてそのリビングには、ご主人が購入した薪ストーブが鎮座。「家族で火を囲んだり、じっくりと炎を眺めたり、そういう暮らしに憧れていたんです」とご主人。鏡石町にある「薪ストーブミュージアム」で見たときに一目惚れし、「この薪ストーブに合う家を作りたい」と、KD設計さんに家づくりを依頼しました。
そんな依頼を受けたKD設計の佐藤大さん。薪ストーブに映えるようにと、天井や壁には白色系のシナ合板を、そのままあらわしで使用。所々に使われた純白のクロスや、ドア枠など造作に使われているツガ材とのコントラストも美しく、適材適所で温かみのある木質材料を配しています。
奥様のこだわりはキッチン。ステンレスの流し台のみを別注し、既製品の部材をはめ込んで使うなど、既製品と造作をうまく組み合わせ、使い勝手のいいキッチンに仕上げました。キッチンがコンパクトな分、階段下など周囲に収納を多めに作ることで対応。夫婦の希望が随所に叶えられた家になっています。
玄関を入ると大きな土間スペース。たっぷりの土間収納も。シルバーの電気スイッチなど小物も家全体で統一。ガラスの抜け感もポイント。
いずれはバイクなども置きたいという旦那さまのために、玄関のモルタルには耐水塗料を使っています。
内装のほとんどが木質系でまとめられたリビング。2階ホールのアールの効いた壁の構造もおしゃれです。シナベニヤも横張りにすると落ち着いた雰囲気に。
キッチンとの仕切りには「黒板塗料」を塗り、家族の連絡ボードに。黒が空間を引き締める効果も。床材として使われた無節の「あつ密すぎ」との相性もよく、暖かみのある空間になりました。
「へ」の時の頂点にある奥様こだわりのキッチン。既製品と造作を組み合わせ、への字の面白さを活かした使い勝手のよいキッチンに。
1階キッチン付近には階段下を含め収納スペースを確保。洗面脱衣、お風呂、サンルームまで一直線動線(写真左)。壁にヒノキ材を使ったハーフユニットバスには、ご主人が選んだ大きめのシャワーヘッドも設置(写真右)。
お風呂のすぐわきには洗濯物を干して収納できる家事楽サンルームを。ガラスを大きくして採光力をアップ。
2階のフリースペースは1階とつながるオープンな空間。奥は子供部屋。
2階寝室。あらわしに使った梁には電気器具が取り付けられます。奥は両側から使えるウォークインクローゼット。
寝室のウォークインクローゼット。収納はすべて大工さんの造作によるもの。シンプルで大容量。
「“へ”の字にすることで立体感が際立ち、建物自体の存在感が強まる」とKD設計の佐藤さん。黒いガルバリウム鋼板とレッドシダーのコントラストが美しい外観。
1階の南側の軒を1,200mmほど引き出し、玄関の雨対策も兼ねています。